
好酸球が高いときにまず押さえたいのが「どこからを好酸球増多と呼ぶか」という定義です。 一般に末梢血好酸球数が0.5×10⁹/L(500/µL)以上を好酸球増多とし、1.5×10⁹/L(1500/µL)以上が6か月以上持続すると臓器障害のリスクが高い「好酸球増多症」とされます。
参考)好酸球増多症 (こうさんきゅうぞうたしょう)とは
好酸球増多は原因から大きく「二次性(反応性)好酸球増多」と「一次性(クローン性)好酸球増多」、そして原因不明の「特発性好酸球増多症」に分類されます。 二次性はアレルギーや寄生虫感染、薬剤などへの反応として生じることが多く、一方で一次性は骨髄増殖性腫瘍の一型として好酸球自体が腫瘍性クローンから増殖している状態です。
参考)好酸球増多 - 11. 血液学および腫瘍学 - MSDマニュ…
臨床的には、軽度・一過性の好酸球高値の多くがアレルギー性鼻炎や気管支喘息、アトピー性皮膚炎などのアトピー性疾患に伴う反応性増多です。 しかし、発熱や体重減少、リンパ節腫脹、末梢血塗抹での異型細胞などを伴う場合には悪性リンパ腫や好酸球性白血病などの血液腫瘍を常に念頭に置く必要があります。
大阪大学の解説ページでは、臓器障害を伴う「好酸球性疾患」を、好酸球肺浸潤症候群や好酸球性消化管疾患、好酸球性筋炎・心筋炎などの臓器ごとの病態として整理しており、鑑別時のイメージづくりに有用です。
参考)好酸球増多症|大阪大学大学院医学系研究科 呼吸器・免疫内科学
好酸球増多症と好酸球性疾患の体系的な整理(大阪大学 呼吸器・免疫内科学)
日常診療で好酸球が高い患者に最もよく遭遇するのは、アレルギー・アトピー関連疾患と薬剤反応、そして地域や渡航歴によっては寄生虫感染です。 アレルギーでは気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎などが典型で、好酸球高値は気道炎症や皮膚炎症の活動性の指標として使われることもあります。
参考)Table: 好酸球増多に関連する重要な疾患および治療法-M…
寄生虫感染は、日本国内では頻度が低下したものの、東南アジアやアフリカなど流行地域への渡航歴がある場合には今なお重要な鑑別です。 代表的なものとしては、組織侵襲性を示す寄生虫による嚢虫症やトキソカラ症(犬回虫症)、住血吸虫症、好酸球性肺浸潤を来す熱帯性肺好酸球増多症などが挙げられます。 これらでは、末梢血好酸球高値に加えて発熱、咳嗽、肝腫大、筋痛など多彩な症状をとるため、単なるアレルギーと誤認しないためにも渡航歴・食事歴の聴取が重要です。
MSDマニュアルのプロフェッショナル版では、好酸球増多と関連する寄生虫・アレルギー疾患を原因別に整理した表があり、初期鑑別の幅を漏れなくカバーするのに適しています。
参考)https://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%8A%E3%83%AB/multimedia/table/%E5%A5%BD%E9%85%B8%E7%90%83%E5%A2%97%E5%A4%9A%E7%97%87%E3%81%AB%E9%96%A2%E9%80%A3%E3%81%99%E3%82%8B%E9%87%8D%E8%A6%81%E3%81%AA%E7%96%BE%E6%82%A3%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E6%B2%BB%E7%99%82%E6%B3%95
好酸球増多症に関連する重要な疾患および治療法(MSDマニュアル プロフェッショナル版)
好酸球が高いときに見逃したくないのが、膠原病や血管炎と関連する好酸球性疾患です。 特に好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA、旧チャーグ・ストラウス症候群)は、好酸球増多、気管支喘息、好酸球性副鼻腔炎、末梢神経障害、肺・皮膚・消化管などの血管炎症状を組み合わせて考える必要があります。 EGPAはANCA関連血管炎に分類されますが、ANCA陰性例も多く、好酸球増多と喘息歴、末梢神経障害(しびれ、脱力)を手掛かりにリウマチ・膠原病内科への紹介を検討すべき疾患です。
好酸球性肺炎や好酸球性肉芽腫性疾患など、肺への浸潤を主体とする「好酸球肺浸潤症候群」も重要なカテゴリーです。 急性好酸球性肺炎では急激な呼吸不全で発症し、胸部X線やCTでびまん性陰影を認める一方、好酸球増多は発症初期には軽度であることもあり、BALでの好酸球比率上昇が診断に寄与します。 慢性好酸球性肺炎では喘息既往を持つ中年女性に多く、末梢血好酸球高値とともに「逆バターフライ影」と呼ばれる特徴的な肺陰影が見られることが知られています。
済生会の解説では、好酸球増多症による臓器障害として、肺の炎症に伴う喘息・息切れ、心筋炎による心不全、消化管炎症による腹痛などが挙げられ、漫然と「アレルギーだから様子見」としない重要性が強調されています。
好酸球が著明に高い、あるいは持続的に高値をとる場合には、反応性増多だけでなく血液腫瘍を含む一次性好酸球増多を常に意識する必要があります。 一次性好酸球増多には、好酸球性白血病、FIP1L1-PDGFRA融合遺伝子陽性の慢性好酸球性白血病、他の骨髄増殖性腫瘍やリンパ系腫瘍に伴う好酸球増多などが含まれます。 これらでは末梢血塗抹での芽球や異型細胞の出現、貧血や血小板減少、LDH・尿酸高値、脾腫など、全身性の腫瘍サインが手掛かりとなり、血液内科への早期紹介が重要です。
MSDマニュアルでは、好酸球数が1.5×10⁹/L以上で6か月持続し臓器障害を伴う場合に「好酸球関連症候群」として扱い、クローン性か二次性かの鑑別に骨髄検査、染色体異常検索、FISHやRT-PCRによる融合遺伝子検索を推奨しています。 原発性好酸球増多症は稀な病態ですが、FIP1L1-PDGFRA陽性例はチロシンキナーゼ阻害薬イマチニブが著効することが知られており、分子レベルでの診断が治療法選択に直結する「意外と治療可能な血液腫瘍」としての側面を持ちます。
上野御徒町こころみクリニックの血液専門医による解説では、好酸球高値が持続する場合や原因がはっきりしない場合には、血液疾患を前提とした精査が必要であることが強調されています。
好酸球増加症の症状・診断・治療(上野御徒町こころみクリニック)
好酸球が高い背景には、よく知られたアレルギーや寄生虫以外にも、内分泌疾患や自己炎症性疾患、家族性好酸球増多症など、意外な原因が隠れていることがあります。 MSDマニュアルの表では、副腎機能低下症(アジソン病など)が好酸球増多の原因として挙げられており、慢性的な倦怠感、低血圧、体重減少、皮膚色素沈着を伴う場合には、ステロイド中止後のリバウンドも含めて副腎機能をチェックする価値があります。 また、IgA欠損症や高IgE症候群、Wiskott-Aldrich症候群などの原発性免疫不全でも好酸球高値がみられ、易感染性や難治性湿疹を伴う小児例では免疫不全のスクリーニングも念頭に置くべきです。
診断アプローチとしては、J-STAGEで公開されているアレルギー学講座の記事が、好酸球増多症の分類と診断フローチャートを示しており、臨床現場で迷ったときの「地図」として有用です。 まずは好酸球数と持続期間、薬剤・食事・渡航歴・ペット飼育歴などの詳細な問診を行い、併存する臓器症状(呼吸器・皮膚・消化管・神経・心臓など)に応じて検査を組み合わせます。
参考)http://hospi.sakura.ne.jp/wp/wp-content/themes/generalist/img/medical/jhn-cq-fujitahoken-160308.pdf
具体的には、
といったステップで進め、アレルギー・感染症・膠原病・血液腫瘍のいずれに重心がありそうかを絞り込んでいきます。
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