
2026年度調剤報酬改定では「かかりつけ薬剤師指導料」「かかりつけ薬剤師包括管理料」が廃止され、かかりつけ薬剤師の評価は服薬管理指導料の枠組みに再編されました。
参考)https://pharmacist.m3.com/column/sinryouhoushu_faq_26/7273
一見すると制度後退に見えますが、実際には「肩書き」よりも、継続的な服薬管理やフォローアップなど具体的な行動に点数を振り分ける方向へのシフトと理解されます。
参考)https://pharmacist.m3.com/column/special_feature/7257
従来の算定要件(患者同意、継続的管理、一元的情報把握、時間外対応)は、服薬管理指導料やフォローアップ加算等に分散して組み込まれており、「かかりつけ薬剤師」という機能自体は維持されたまま評価軸が変わった形です。
2026年以降、かかりつけ薬剤師が患者対応を行った場合は、服薬管理指導料1-イまたは2-イを算定することになり、薬剤師個人の関与と患者の同意が前提となります。
この「1-イ/2-イ」の区分が、手帳の持参状況や同意取得方法と密接に連動するため、算定要件を理解する際には、点数表上の文言だけでなく、お薬手帳の運用ルールをセットで押さえることが重要です。
さらに、訪問加算やフォローアップ加算など、新設加算がかかりつけ薬剤師の業務の「結果」に対して評価する構造となっており、算定漏れ防止にはこれらを含めた全体設計が求められます。
参考)【薬局 2026 かかりつけ】かかりつけ薬剤師制度の大転換を…
2026年度改定で最も実務インパクトが大きいのが、かかりつけ薬剤師算定要件における「同意取得の方法」が、同意書中心からお薬手帳への記載中心へと変更された点です。
参考)同意取得のルール変更!かかりつけ薬剤師の点数変更とお薬手帳活…
従来は、患者の署名入り同意書を薬局側で保管していれば算定要件を満たしていましたが、改定後は、お薬手帳に必要事項を記載し、そのページのコピー等を保管することが同意取得の要件となりました。
ここで重要なのは、過去に同意書で同意を得ている患者であっても、改定後は手帳への記載対応が必要であり、対応しない場合は算定要件を満たさなくなる点です。
お薬手帳に記載すべき項目として、患者の氏名・生年月日・連絡先、アレルギー歴・副作用歴、主な既往歴、日常的に利用する保険薬局の名称・連絡先などが挙げられています。
これらに加えて、薬剤師の氏名の近傍に「かかりつけ」の文字を明示的に記載することが求められており、この表記がないと同意取得要件を満たしたとみなされない点は見落とされがちなポイントです。
参考)かかりつけ薬剤師・薬局とは? なるための要件や2026年度調…
なお、お薬手帳をそもそも所持していない患者は、かかりつけ薬剤師としての算定対象外となる一方、手帳を所持していて持参しなかったケースでは、服薬管理指導料2-イの算定が認められており、レセプトコメントで状況を補足しておくと監査対応がスムーズになります。
同意取得ルールの変更は、患者の負担軽減だけでなく、薬局側の文書管理負荷を減らす目的も指摘されていますが、実際には「手帳コピーのファイリング」「電子保存のルール整備」など、新たな運用フローの設計が必要です。
特に、在宅患者や訪問服薬指導を実施するケースでは、手帳を患者側が管理できていないことも多く、事前に家族・介護者と手帳の保管場所・持参タイミングを確認するなど、事務フローとチーム医療の連携が求められます。
参考)https://pharmacist.m3.com/column/chouzai_santei/7468
こうした運用の細部は診療報酬答申や各種Q&Aに散在しているため、施設ごとにローカルルールを明文化し、スタッフ教育の際に症例ベースで共有することが有効です。
参考)https://www.med.ts-pharma.com/di-net/ts-pharma/pickup/pickup119.pdf
2026年改定では、かかりつけ薬剤師の行動を評価する新設加算として「フォローアップ加算(50点)」「かかりつけ薬剤師訪問加算(230点)」などが導入されました。
参考)かかりつけ薬剤師加算2026改定|残薬調整・疑義照会の新評価…
これらの加算は、単にかかりつけ薬剤師として登録されているだけでは算定できず、残薬調整、薬学的有害事象の予防、訪問服薬指導など、具体的な介入結果と記録が必須となります。
実務上は、服薬管理指導料1-イ/2-イと組み合わせて算定されることが多く、算定漏れを防ぐには、レセプト入力画面や電子薬歴上に「フォローアップ実施有無」「訪問の有無」と紐づくチェック項目を設けるなど、ワークフロー設計が重要です。
フォローアップ加算では、服薬状況や副作用の発現、残薬量などを一定期間フォローし、その内容を薬学的に評価して服薬内容の見直しや医師への情報提供を行うことが要件とされています。
このため、電話やオンライン服薬指導など非対面のフォローも対象となるケースがありますが、「単なる世間話的な確認」では要件を満たさないため、フォロー項目のテンプレート化と、薬剤師ごとの評価コメントの質を維持する工夫が必要です。
訪問加算については、在宅患者に対してかかりつけ薬剤師が訪問し、服薬支援・残薬整理・副作用確認などを行った際に算定されますが、訪問の頻度・時間帯、緊急対応との区別など、医師・看護師との役割分担を事前に調整しておかないと算定要件を満たせなくなるリスクがあります。
意外なポイントとして、残薬調整や疑義照会に関する新評価では、かかりつけ薬剤師の関与により点数が30点から50点へと増えるなど、かなり細かく「誰が関与したか」が評価されるようになっています。
これは、かかりつけ薬剤師が単に「名義上の担当者」ではなく、患者の薬物療法全体を俯瞰してリスクを減らす役割を担っていることを明確に示す設計であり、薬局経営目線では、採用・育成のROIを試算し、かかりつけ薬剤師を軸にした診療報酬戦略を立てる余地があります。
現場の薬剤師にとっては、これらの加算の有無が業務評価にも直結しうるため、症例検討会で「フォローアップ加算を算定できた症例/できなかった症例」を振り返ることが、スキルアップと算定精度向上の両面で有効です。
かかりつけ薬剤師算定要件2026では、お薬手帳に必要事項を記載し、そのページのコピー等を薬局で保管することが同意取得要件の中心になっていますが、具体的な運用フローは施設ごとにかなりばらつきがあります。
実務上の最低限のフローとしては、①かかりつけ薬剤師候補の説明、②患者の同意確認、③手帳への記載(「かかりつけ」表記を含む)、④該当ページのコピー取得、⑤薬局内の専用フォルダや電子保存先への格納、という一連のステップを標準化しておくことが望ましいです。
特に、手帳ページのコピーを電子化して保存する際には、患者ごとのID紐づけとアクセス権限管理を適切に設定し、個人情報保護の観点からアクセスログの記録も検討する必要があります。
ここで見落とされがちな点として、「他の保険薬局のかかりつけ薬剤師氏名が記載されている手帳への上書きは原則不可」とされており、患者の選択による変更時には薬剤服用歴にも変更の旨を記載することが求められています。
つまり、一人の患者に対して複数のかかりつけ薬剤師を並立させる運用は原則想定されておらず、変更時には前任薬剤師との情報共有や、医師への連絡などを含めた「引き継ぎフロー」を設けておくことが安全です。
患者側の希望で、複数薬局を使い分けたいケースも少なくありませんが、その場合は「手帳を一元化しないと算定できない場面」「情報が分断されることによるリスク」を明確に説明し、かかりつけ薬剤師制度の趣旨を共有するコミュニケーションが重要になります。
また、手帳を所持していない患者は算定対象外となるため、新規患者受け入れ時や初回調剤時に「手帳の有無」「持参可否」を確認し、必要であれば手帳の交付や導入説明を行うことが、かかりつけ薬剤師制度の運用上は実質的な前提条件になります。
在宅や精神科領域など、手帳の自己管理が難しい患者では、家族や施設職員に「手帳の役割」と「かかりつけ薬剤師算定要件への影響」を説明し、手帳が行方不明になった場合の対応(再発行、情報の再記載)まで含めて事前に合意しておくとトラブルを避けやすくなります。
これらの運用は、薬局内のルールだけでは完結せず、医療機関・介護事業所との連携が不可欠なため、地域連携会議等で「手帳を軸にした情報共有」をテーマにした意見交換を行っておくと、制度改定の影響を最小化できます。
参考)調剤報酬改定2026のポイントと対応|LINEでつながる薬局
検索上位の記事ではあまり触れられていないものの、かかりつけ薬剤師算定要件2026とお薬手帳運用の変更は、電子お薬手帳やPHR(Personal Health Record)との連携を前提にした設計と見ることもできます。
同意取得を「手帳記載+コピー保管」にシフトしたことで、将来的には電子手帳上で「かかりつけ薬剤師」のフラグを付け、クラウド上で同意履歴やフォローアップ記録を一元管理する方向性が想定されますが、現行制度では紙との併存期にあるため、二重管理のリスクをどう抑えるかが現場の課題です。
また、残薬調整や有害事象予防加算など「行動評価」が細分化されたことで、AIやアルゴリズムを用いたハイリスク患者抽出、残薬リスクスコアリングなどの情報技術をかかりつけ薬剤師業務に組み込む余地も広がっています。
デジタルお薬手帳を活用すれば、患者の服薬履歴・残薬量・副作用報告をリアルタイムに集約し、かかりつけ薬剤師がフォローアップ加算や訪問加算の対象となる患者を自動抽出する仕組みを構築することも理論上可能です。
一方で、算定要件自体は現時点では「人間の薬剤師が患者と直接関わる」ことを前提としており、AIによる自動通知やチャットボット対応だけでは加算対象とはならないため、テクノロジーを「支援ツール」として位置付けた上で、最終判断・説明責任は薬剤師が担う体制が必要です。
このように、かかりつけ薬剤師算定要件2026は、紙の手帳運用を強化しつつも、中長期的にはPHRや電子手帳との統合を見据えた設計とも読み取れるため、今のうちからデジタル環境の整備とスタッフのITリテラシー向上を進めておくことが、次回改定以降の対応力に直結します。
かかりつけ薬剤師算定要件とデジタル手帳・PHR活用の方向性についてコンパクトに整理している参考資料です(制度全体像の把握に有用)。
2026年度調剤報酬改定:かかりつけ薬剤師はどう変わる?(m3.com特集)
かかりつけ薬剤師の同意取得とお薬手帳運用の実務的なルール変更を詳しく解説している記事で、現場のフロー設計に直結する情報がまとまっています(同意取得部分の参考リンク)。
同意取得のルール変更!かかりつけ薬剤師の点数変更とお薬手帳(PSFT薬局コラム)
かかりつけ薬剤師訪問加算の算定要件・レセプト記載まで網羅的に整理されており、在宅や訪問服薬指導の設計に役立つ資料です(訪問加算・在宅対応部分の参考リンク)。
【2026年新設】かかりつけ薬剤師訪問加算の算定要件(m3.com)
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