
ビグアナイド系薬剤、特にメトホルミンによる乳酸アシドーシスの発症機序は、薬理作用そのものに起因しています。ビグアナイド薬は肝臓における糖新生を抑制することで血糖降下作用を示しますが、この作用が乳酸アシドーシスの根本原因となります。
参考)第26回 メトホルミンによる乳酸アシドーシスはなぜ起こるの?…
糖新生の過程では、筋肉からアミノ酸、乳酸、ピルビン酸、脂肪組織からグリセロールが利用され、肝臓でグルコースに代謝されます。メトホルミンはこの代謝経路を抑制することで血糖値を低下させますが、同時に肝臓における乳酸からの糖新生も抑制してしまいます。その結果、血中乳酸濃度が上昇します。
参考)乳酸アシドーシスについて
通常状態では、この乳酸の増加に応じて乳酸の代謝が促進され、乳酸値のバランスは保たれます。しかし、肝臓での代謝能力を超えて乳酸が増加した場合、あるいは肝臓での乳酸代謝能力そのものが低下している場合には、このバランスが崩壊し、乳酸アシドーシスが発現するリスクが高まります。
重要な点として、この副作用は「薬理作用による副作用」であり、アレルギー反応や特異体質によるものではありません。也就是说、ビグアナイド薬の降糖作用そのものが、乳酸アシドーシスのリスクを内包しているというわけです。
乳酸アシドーシスの初期症状としては、胃腸症状(悪心、嘔吐、腹痛、下痢など)、倦怠感、筋肉痛などが認められます。これらが進行すると、過呼吸、脱水、低血圧、低体温、昏睡などの重篤な症状へと発展し、致死率の高い疾患となります。
腎機能の低下は、ビグアナイド薬による乳酸アシドーシスの発現において最も重要な危険因子の一つです。メトホルミンは腎臓から未変化体のまま排泄される薬剤であり、腎機能が低下すると血中濃度が上昇し、乳酸アシドーシスの発症リスクが高まります。
参考)https://www.radiology.jp/content/files/994.pdf
現在のガイドラインでは、メトホルミンの使用に関して以下の基準が設けられています:
臨床上、特に注意すべきは「一過性の腎機能低下」です。以下の状況では、普段は正常な腎機能を持つ患者でも一過性に腎機能が低下し、乳酸アシドーシスのリスクが高まります:
特にヨード造影剤を使用した検査・治療を受ける際には、造影剤使用から48時間はメトホルミンの内服を休薬することが強く推奨されています。造影剤による一過性の腎機能低下が、メトホルミンの排泄を妨げ、血中濃度上昇を招くためです。
参考)https://www.radiology.jp/content/files/688.pdf
また、以下の薬剤も腎臓の血流を低下させる可能性があり、併用時には注意が必要です:
日本糖尿病協会によるメトホルミン適正使用Recommendation
肝機能障害もビグアナイド薬による乳酸アシドーシスの重要な危険因子です。肝臓は乳酸代謝の主要な臓器であり、肝機能が低下すると乳酸の処理能力が低下します。ビグアナイド薬によって増産された乳酸を肝臓が処理できなくなり、血中乳酸濃度が上昇します。
循環不全を伴う状態も重大なリスク因子です。心不全、心筋梗塞、呼吸不全などの状態では、以下のメカニズムで乳酸アシドーシスのリスクが高まります:
この「二重の悪影響」により、循環不全を合併した患者では乳酸アシドーシスの発症リスクが著しく高まります。
高齢者も特に注意が必要な集団です。高齢者では以下の要因が複合してリスクが高まります:
過度のアルコール摂取も避けるべきです。アルコールは肝臓における乳酸の代謝を低下させるだけでなく、脱水状態を来すこともあり、乳酸アシドーシスのリスクを二重に高めます。
糖尿病情報センターによるビグアナイド薬と乳酸アシドーシスの解説
ここまでは標準的な知識でしたが、臨床現場で意外に見落とされがちな重要なポイントがあります。それは「シックデイ時の対応」です。
発熱、嘔吐、下痢、食欲不振などの症状がある「シックデイ」時には、以下の理由で乳酸アシドーシスのリスクが急上昇します:
参考)case 154: sickdayなのにメトホルミンだけは欠…
実際の症例報告では、慢性心不全とCKD G3a(eGFR 49 mL/min/1.73m²)の82歳男性が、嘔吐下痢症状があるシックデイにもメトホルミンを内服し続け、重篤な乳酸アシドーシスを発症した例が報告されています。
臨床的Managementのポイントは以下の通りです。
もう一つの意外な事実は、乳酸アシドーシス発症例のほとんどが、禁忌または慎重投与事項に該当する患者であったという報告です。 也就是说、適応を厳密に遵守していれば、発症可能性は極めて低いのです。
治療法としては、以下の対応が必要です:
参考)乳酸アシドーシスとは?原因・症状・治療をわかりやすく解説
血液透析は、メトホルミンを効果的に除去できるため、重症例では救命に有効な治療法となります。
日本放射線技術学会によるヨード造影剤とビグアナイド薬の併用に関する注意喚起
ビグアナイド薬による乳酸アシドーシスを予防するためには、以下の戦略的アプローチが有効です。
2. 患者教育の徹底
患者に以下の状況を理解してもらい、該当する場合は速やかに内服を中止し、医療機関に連絡するよう指導します。
3. 定期的なモニタリング
4. 薬剤相互作用の考慮
以下の薬剤との併用時には注意が必要です。
5. 適応の厳密な遵守
最新のガイドラインに基づき、以下の基準を厳守します。
これらの予防策を徹底することで、ビグアナイド薬による乳酸アシドーシスの発症リスクを最小限に抑えることが可能です。
乳酸アシドーシスと糖尿病の関係について詳しく解説
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