
これにより、シナプス間隙のセロトニンとノルアドレナリンの濃度が上昇し、神経伝達がスムーズになることで抗うつ作用および抗不安作用を示します。
参考)SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)とは…
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が主にセロトニンのみを増強するのに対し、SNRIはセロトニンに加えてノルアドレナリンも増加させる点が最大の特徴です。
ノルアドレナリンの増加は、意欲向上や覚醒水準の向上に関与し、無気力状態や倦怠感が目立つ患者に対して特に有効とされています。
参考)抗うつ薬の種類(SSRI・SNRIなどの違い)|あおぞらクリ…
この下行性疼痛抑制系は、脊髄から脳へ向かう痛みの伝達を抑制する内因性の痛み抑制機能であり、SNRIはこの経路を正常化に近づけることで慢性疼痛を改善します。
参考)http://kesen-med.or.jp/lecture/20191128.pdf
現在、日本国内で承認されている主なSNRIは3種類あり、それぞれ異なる特徴と適応症を持っています。
参考)snri/">https://minato-mental.com/blog/antidepressant-snri/
ミルナシプラン(商品名:トレドミン)
デュロキセチン(商品名:サインバルタ)
ベンラファキシン(商品名:イフェクサーSR)
参考)【精神科処方薬辞典💊】ベンラファキシン(イフェクサーSR)—…
SNRIの副作用は、作用する神経伝達物質の範囲に起因し、SSRIとは異なるプロファイルを示します。
セロトニンに関連する副作用:
ノルアドレナリンに関連する副作用:
参考)セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬 - Wikip…
特に注意すべきは、血圧上昇のリスクです。ベンラファキシンでは高用量で血圧上昇が報告されており、定期的な血圧モニタリングが推奨されます。
また、SNRIはいずれの製剤も中断症候群のリスクがあり、特にベンラファキシンはSNRIの中でも中断症候群が強いと報告されています。
抗うつ薬を飲み始めると、脳内のセロトニンはすぐに増え始めますが、脳での効果が出るまでには2〜4週間のタイムラグが生じます。これは、セロトニン神経にある5-HT1A自己受容体によるネガティブフィードバックが脱感作するまで時間がかかるためです。
参考)https://pharmacist.m3.com/column/psychotropic_drug/7505
一方、消化管にある5-HT3受容体はセロトニンが増えるとほぼ即座に反応するため、脳での効果が出るより早く、飲み始めの数日で吐き気や下痢が先行して出現することがあります。
SNRIの疼痛治療効果は、うつ状態や不安の有無にかかわらず発現するという点が、あまり知られていない重要な事実です。
このことは、整形外科の医師がSNRIを疼痛治療目的で処方する背景にもなっています。
参考)抗うつ薬の種類と特徴を解説します。SSRI、SNRI、NaS…
また、慢性腰痛に対する抗うつ薬の効果を比較した研究では、SSRIと比較してSNRIが優れている結果が報告されており、これは下行性疼痛抑制系への作用の強さが関与していると考えられます。
さらに、デュロキセチンとSSRIの効果を比較した研究では、仕事と活動の改善において、デュロキセチンが優れていた結果が報告されています。
実臨床でのSNRI選択にあたっては、患者の主訴と症状プロファイルに基づいた使い分けが重要です。
選択基準の実際:
独自視点:SNRIの「用量反応曲線の多様性」を考慮した処方戦略
SNRIの各製剤は、用量対効果曲線が異なるという点が、実臨床で見落とされがちな重要なファクターです。
ミルナシプランは比較的フラットな用量反応曲線を示し、増量による効果の増強は限定的です。一方、デュロキセチンは20mgから60mgの範囲で明確な用量依存性を示します。ベンラファキシンは最も顕著な用量依存性を示し、低用量ではSSRI様の作用、高用量では強力なノルアドレナリン作用を示すという「二段階作用」を示します。
この特性を考慮すると、以下のような戦略が考えられます:
1. 漸増による作用の調整: ベンラファキシンでは、まず低用量でSSRI様の不安抑制効果を狙い、反応が不十分な場合に徐々に増量してノルアドレナリン作用を追加するという、段階的なアプローチが可能
2. 高齢者への配慮: ミルナシプランは用量反応曲線がフラットであるため、増量による副作用リスクの増大が少なく、高齢者や副作用に感受性の高い患者に適している可能性
3. 疼痛優先例: デュロキセチンは疼痛適応が最も多く、下行性疼痛抑制系への作用が強く、疼痛を主訴とする患者では第一選択となり得る
SNRIとSSRIの明確な使い分けは難しいとされていますが、併用して使用するよりも1剤ずつ効果を確認し、効果がみられなければ別の薬剤に切り替えるということが大事です。
抗うつ薬の効果の強さをエビデンスに基づくと、NaSSAが最も強く、次がSNRI、その次がSSRIという順になります。副作用が出る順番も同じであるため、初めは副作用の少ないSSRIからというのが基本です。
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