
基礎研究とは、特定の診療技術や製品化を直接の目的とせず、自然現象や生命現象の背後にある原理やメカニズムを理解するための理論的・実験的研究を指します。
参考)https://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/seisaku/haihu03/kanazawa6.pdf
総務省や内閣府の科学技術統計では「特別な応用、用途を直接に考慮することなく、仮説や理論を形成するため、または現象や観察可能な事実に関して新しい知識を得るために行われる理論的または実験的研究」と定義されており、医療系の基礎研究もこの枠組みに含まれます。
医学研究においては、分子生物学、細胞生物学、免疫学、病態生理学などが典型的な基礎研究の領域であり、「治療薬の開発」ではなく「疾患の成り立ちの理解」を主目的にしている点が特徴的です。
参考)基礎研究。例で見る基礎研究とは
一見すると日常診療から遠く、成果がすぐに見えないため誤解されやすい領域ですが、長期的には診断基準の改訂や新規薬剤の標的選定など、医療の基盤そのものを静かに更新し続けているのが基礎研究です。
参考)https://www.mext.go.jp/component/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2019/05/22/1417228_001.pdf
応用研究は、基礎研究で得られた知をもとに、「特定の疾患に対する新しい診断技術を作る」「既存薬の新しい適応を探る」といった比較的具体的な目的を持つ研究であり、企業や大学病院のトランスレーショナルリサーチ部門が担うことも多いです。
参考)基礎研究(キソケンキュウ)とは? 意味や使い方 - コトバン…
ユニークなのは、内閣府の議論では、基礎研究を「学術指向研究」と「革新研究」を合わせたものとして再定義しており、従来の『実用性を考えない純粋な研究』というイメージに加えて、ブレイクスルー創出を狙った革新的研究も基礎研究の一部と捉えている点です。
この視点に立つと、トランスレーショナルリサーチや産学連携プロジェクトの初期段階は「応用研究」に押し込めず、基礎研究の延長線上として守り育てるべき段階とも理解でき、臨床側が基礎研究の成果を活かす際のコミュニケーションが変わってきます。
医学系の基礎研究には、免疫チェックポイント分子の同定、がん増殖シグナルの解明、アルツハイマー病におけるアミロイドやタウタンパク質の挙動の解析など、当初は「治療法開発」とは直接結びつかない探究テーマが数多く存在します。
医療従事者が研究論文を読む際に、基礎研究・応用研究・開発研究のどの段階かを意識しておくと、「現在の診療にどう取り入れうるのか」「どこまでが仮説検証段階なのか」を冷静に評価しやすくなり、エビデンスの読み方にも厚みが出てきます。
日本では、科学技術研究調査などの基幹統計において、研究費を「基礎研究」「応用研究」「開発研究」に区分して集計しており、その定義が政策や研究評価、研究者のキャリアパスに少なからず影響しています。
基礎研究の研究費は、大学・公的研究機関が担う割合が高く、企業内研究に比べて短期の収益には直結しにくいため、景気変動や政策転換の影響を受けやすいとされています。
内閣府の資料では、基礎研究を「学術指向研究」と「革新研究」の集合として位置づけ、社会的なブレイクスルーの源泉として重要視しつつも、同時に社会への説明責任や研究目的の明確化も求められると指摘しています。
文部科学省による基礎研究の位置づけや推進策の背景を確認したい方への参考リンク:基礎研究の政策的意義や研究費統計の見方を整理する際に役立ちます。
第1章 新たな知を発見する基礎研究(文部科学省)
医療従事者にとって、基礎研究の論文は「今すぐ診療には使えない」と感じてしまいがちですが、診療の質を上げるための思考の道具として活用することができます。
一つの視点は、基礎研究を「病態理解の地図」として読むことです。たとえば、炎症経路の新しい分岐や細胞間相互作用の報告を、自分の担当する疾患の病態生理に当てはめて考えることで、「この患者の症状はどこで説明がつき、どこがまだわかっていないのか」を整理しやすくなります。
教育の場面では、若手医師やコメディカルに「この診療ガイドラインの背景には、こうした基礎研究がある」というストーリーを伝えることで、エビデンスの重みと限界をバランスよく理解してもらうことが可能です。
基礎研究 - 医療情報をわかりやすく発信するプロジェクト(東京大学)
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