
時間短縮のパーセント計算でまず押さえたいのは、「何を基準にするか」を明確にすることです。
参考)https://fantasia.sakura.ne.jp/tranquil/?p=2378
一般的には、改善前(導入前)の時間を基準として、どれだけ短くなったかを割合で表現します。
参考)時間の短縮率を%で表したいのです。教えてください。 - 60…
代表的な計算式は次の三つです。
- 短縮率 = 〔(改善前時間 − 改善後時間) ÷ 改善前時間〕 × 100
- 例:60分 → 45分なら、(60 − 45) ÷ 60 × 100 = 25%短縮
- 残存率 = 〔改善後時間 ÷ 改善前時間〕 × 100
- 60分 → 45分なら、45 ÷ 60 × 100 = 75%(25%削減されたとも言える)
- 1件あたり削減時間 × 件数 = 総削減時間
- その総削減時間を勤務時間全体で割ると、「勤務時間の何%を削減できたか」がわかる
医療現場では「何%短縮しました」と言うだけだと、患者や他職種にとってイメージが湧きにくいことがあります。
例えば「前より25%短縮」と伝えるより、「1件あたり15分短縮で、1日20件なら合計5時間の時間短縮」と補足すると、インパクトが具体的になります。
また、管理者向けの説明では、時間短縮を人件費や残業削減に換算して示すと、組織的な改善の価値がより伝わりやすくなります。
ただし、医療の安全や患者体験の質は、単純に時間短縮だけで評価できないため、「短縮しすぎて安全性やコミュニケーションが損なわれていないか」という視点を一緒に示すことが重要です。
実際の行政・医療の資料でも、時間短縮はパーセントで評価されることが多くあります。
例えば、新潟市の資料では、新たなスマートIC開通により、秋葉区から中央区の病院への平均救急搬送時間が約5分短縮し、これは全体として約16%の短縮と報告されています。
このケースを計算式に当てはめると、次のようなイメージになります。
このように「分」の差(絶対値)と「%」の差(相対値)の両方を示すことで、現場の感覚と管理者の評価軸をつなぎやすくなります。
救急搬送だけでなく、以下のような場面でも同じ考え方が使えます。
たとえば「平均待ち時間が40分から30分に改善した」という場合、10分の短縮だけだと「大したことない」と捉えられることがあります。
しかし短縮率で見ると、(40 − 30) ÷ 40 × 100 = 25%短縮であり、「4人待っていたら1人分の待ち時間をゼロにできたのと同じ」と説明すると、現場にも分かりやすく伝わります。
また、ある土木系の研究では、道路整備による所要時間短縮の効果を評価し、交通量や時間短縮を組み合わせて経済的便益を算出しています。
参考)http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00035/2000/55-04/55-04-0241.pdf
医療機関が院内ルートや動線を見直す際にも、同様のフレームワークを応用し、「スタッフの移動時間短縮」がどの程度の業務効率化に相当するかを試算することができます。
参考:救急搬送時間短縮の効果の行政資料(救急搬送時間と短縮率の実例として有用)
新津西スマートIC開通による救急搬送時間短縮効果(新潟市)
医療現場では、エクセルやシステムが使えない場面でも、頭の中でざっくりとしたパーセント計算を求められることがあります。
このとき、厳密な計算よりも「オーダー感」を素早くつかむことが重要です。
時間短縮のパーセント計算を頭の中で行うときのコツとして、以下のポイントがあります。
- 10%短縮 = もとの時間の約1割
- 20%短縮 = 約2割
- 50%短縮 = 半分になったイメージ
- 38分 → 40分と見なす
- 73分 → 70分と見なす
- 近似した上で、短縮時間との比を計算する
- 60分の25%短縮 = 15分短縮
- 30分の33%短縮 ≒ 10分短縮
- 20分の50%短縮 = 10分短縮
例えば、「平均外来待ち時間を45分から35分に短縮しました」と報告する場面を考えます。
厳密には(45 − 35) ÷ 45 × 100 ≒ 22.2%ですが、現場では「約2割短縮」と表現すれば十分なことが多いでしょう。
また、医療者同士のカンファレンスでは、「処置1件あたり5分短縮できた」という情報を、「1日20件なら100分=約1時間40分短縮」と秒で換算できると、改善のインパクトがすぐに共有できます。
時間短縮のパーセントを使い慣れてくると、「この改善は1割なのか3割なのか」という感覚レベルで、施策の優先度を判断しやすくなります。
参考:所要時間短縮を用いた効果評価の学術的な枠組み(計算ロジックの背景理解に有用)
所要時間短縮の効果評価(日本土木学会論文)
時間短縮をパーセントで表現するときには、いくつかの落とし穴があります。
特に医療現場では、「数字上の削減」と「医療安全・患者体験の質」がトレードオフになりやすい点に注意が必要です。
代表的な落とし穴は次の通りです。
- 元の時間ではなく、改善後の時間で割ってしまう
- 結果として、短縮率を大きく見せてしまう危険がある
- 絶対時間が短い場合、20〜30%短縮でも、実際には数分しか変わらないことがある
- 例えば10分→7分で30%短縮だが、患者の体感としては「そこまで変わらない」こともある
- 平均値だけを見ると短縮していても、ピーク時の待ち時間がほとんど改善していない場合がある
- 医療現場では「最も待たされた人」が問題になりやすいため、中央値や上位何%の値も確認した方がよい
医療機関の業務効率化に関する厚生労働省の検討会資料でも、単純な業務量削減だけでなく、医療安全や働き方改革とのバランスが強調されています。
参考)https://www.mhlw.go.jp/content/10801000/001586545.pdf
時間短縮のパーセント計算を用いる際は、「どの業務のどの部分を短縮したのか」「なにを犠牲にしていないか」をセットで説明することで、現場の納得感を高めることができます。
さらに、電子カルテのテンプレート追加やAI文字起こしなどの導入により記録時間が短縮されるケースでも、「入力時間は短縮されたが、確認漏れが増えた」といった副作用がないかを観察する必要があります。
パーセントの改善だけを追うのではなく、「安全性・納得性・説明責任」という医療の基本的な価値との両立を常に意識することが、医療従事者に求められる視点です。
参考:医療機関における業務効率化と職場環境改善の論点(時間短縮と働き方改革の両立を考える上で有用)
医療機関の業務効率化・職場環境改善の推進に関する論点(厚生労働省)
多くの解説では、時間短縮のパーセント計算は「業務効率」や「コスト削減」の観点で語られがちです。
しかし、医療現場ではこの計算を「患者説明」や「チーム内の心理的安全性」にも活かすことができます。
例えば、外来の待ち時間対策を実施した際、患者から「まだ待たされる」と不満が出るケースがあります。
このとき、「以前より20%短縮しました」と数値だけを示すのではなく、次のように分解して説明すると納得感が高まります。
このように、時間短縮のパーセント計算を用いながら、「どの部分が改善され、どの部分は医療の質確保のため必要な時間なのか」を説明することで、単なる待ち時間短縮から「納得感のある待ち時間」への転換を図ることができます。
また、多職種チームのカンファレンスでは、時間短縮のパーセントを「業務の見える化」の入り口として使う方法も有効です。
このように、同じ「20%短縮」でも、職種によって元の時間や負担の意味合いが異なります。
チーム全体でパーセントと絶対時間の両方を共有し、「どの時間短縮が患者にとって最も価値が高いか」を議論することで、単なる効率化から「患者価値の最大化」へと議論を発展させることができます。
さらに、教育現場では、研修医や新人看護師に「自分の動線や手技の時間を測り、パーセントで振り返る」習慣を持ってもらうと、改善思考が育ちやすくなります。
例えば「採血準備〜片付けまで」を動画で撮影し、時間短縮のパーセントを計算してフィードバックすることで、本人のモチベーション向上につながるケースもあります。
このように、時間短縮のパーセント計算は、単なる数字遊びではなく、「説明」「合意」「学習」のツールとしても活用できる点が、医療現場ならではの大きな利点と言えるでしょう。
医療従事者として、あなたが日常業務で「この時間、本当に妥当か?」と感じているプロセスはありますか?
そのプロセスに対して、まずは一度ストップウォッチを当て、時間短縮のパーセント計算で見える化してみると、どのような気づきが得られそうでしょうか。
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