
インフォームドアセントは、「説明されたうえでの賛成・承認」という意味をもつ言葉で、特に小児患者に対する医療説明と同意のあり方を示す概念として用いられます。
参考)インフォームドアセントとは? 意味や使い方 - コトバンク
成人患者に対しては、治療方針や予後など十分な情報提供を行い、本人の自己決定に基づいて同意を得る「インフォームドコンセント」が原則ですが、小児や判断能力が未成熟な人では必ずしも同じ枠組みをそのまま適用できません。
参考)インフォームド・コンセント
そのため、小児では法的な最終同意は保護者などの代諾者が行いながらも、患児本人に年齢・発達に応じた説明を行い、そのうえで本人の「賛成」「納得に近い承諾」を得ることを重視するのがインフォームドアセントです。
参考)インフォームドアセントとインフォームドコンセントの違いをやさ…
インフォームドアセントのポイントは「法的な同意」ではなく、「倫理的・実務的に尊重すべき本人の意思表明」であることです。
参考)治験用語集|秋田大学未来研究統括機構 臨床研究支援オフィス
インフォームドコンセントは、医師・看護師による説明と患者の自己決定を中心とする法的・倫理的プロセスであり、契約的側面を含みますが、インフォームドアセントは患者の自律性の芽生えを尊重するための補完的な仕組みとして位置づけられます。
参考)インフォームドコンセントと倫理
このため、アセントは「同意」と訳される一方で、「賛成」「承認」といったニュアンスを含み、必ずしも法的拘束力を前提としていない点が特徴的です。
参考)インフォームド・アセント
インフォームドアセントが注目されるようになった背景には、子どもの権利条約をはじめとした国際的な人権の流れがあり、子どもの意見表明権・自己決定の尊重が医療現場にも強く求められるようになったことが挙げられます。
従来は保護者への説明と同意(インフォームドコンセント)が中心でしたが、現在では患児本人にも可能な限りわかりやすい説明を行い、自発的な賛成を得ることが求められるようになりました。
この流れは、がん医療や慢性疾患の長期フォローアップ、小児治験など、子ども自身が治療や研究に長く関わる領域ほど重要性が増しています。
インフォームドコンセントの定義や理念について整理したいときに有用
インフォームド・コンセント | 公益社団法人日本看護科学学会
インフォームドアセントの典型的な対象は、「法的には本人が同意の主体ではないが、ある程度の理解力と意思表明能力をもつ小児や認知機能低下のある高齢者など」とされています。
小児の場合、年齢だけで一律に線を引くことは難しいものの、治験などでは概ね7歳前後からアセント取得の対象とする運用が一般的とされ、実際の現場でも「就学前後」「思春期」といった発達段階ごとに説明内容を調整する工夫が求められます。
認知症高齢者では、日内変動や環境要因で理解度が変動するため、同じ患者でも時間帯や状況に応じて説明の方法・タイミングを変える必要があります。
興味深い点として、インフォームドアセントはあくまで法的義務ではなく、倫理的・実務上の「好ましい行為」として位置づけられているケースが多いことが挙げられます。
例えば、秋田大学の治験用語集では、インフォームドコンセントが各国の法律・規則に基づき義務的に実施されるのに対し、インフォームドアセントは法規制上の義務がないにもかかわらず自発的に実施される行為とされています。
にもかかわらず、近年は国際的な倫理指針や製薬企業の治験ポリシーにおいて、アセント取得を積極的に求める流れが主流となっており、「法的義務はないが実務的には必須に近い」領域が広がりつつあります。
また、小児のインフォームドアセント文書は画一的なテンプレートが存在せず、対象となる子どもの知能レベル・理解力・疾患背景に応じて個別に作成する必要があるとされています。
このため、医療従事者やCRC(治験コーディネーター)は、年齢ごとの理解度を踏まえた説明資料を準備し、必要に応じてイラストや写真、図解を用いるなど、教育的な工夫を求められます。
同時に、説明の場には保護者だけでなく、場合によっては学校の教員や医療ソーシャルワーカーなども関わり、子どもが安心して自分の意見を言える雰囲気作りが重要になります。
小児治験におけるインフォームドアセントの定義と対象の考え方に関する実務的な説明
インフォームド・アセントとは | 製薬業界 用語辞典
インフォームドアセントを実践する際、説明の方法は「年齢・発達段階・背景に合わせること」が最も重要であり、一般的な成人向け同意文書をそのまま読み聞かせるだけでは不十分です。
コトバンクの解説でも、小児患者に対しては平易な言い回しや絵を用いるなどの工夫によって、自発的な同意を得ることが推奨されています。
このように、言語化だけでなく視覚的な補助、具体的な例え、ロールプレイなどを組み合わせ、子どもが自分なりに理解し、質問しやすい状況をつくることが求められます。
具体的な工夫の例として、以下のようなポイントが挙げられます。
また、「賛成してもらうこと」自体が目的化すると、アセントが形式的になりかねません。
大切なのは、子どもが自分の意見や不安を言葉にし、それを医療チームが真剣に受け止めるというプロセスであり、たとえ治療方針が最終的に保護者や医療側の判断に委ねられるとしても、子どもの声を無視しないという姿勢が欠かせません。
このプロセスを丁寧に行うことで、医療者と子ども・家族の信頼関係が強まり、治療へのアドヒアランスや長期的な心理的適応にも好影響を与えると報告されています。
インフォームドアセントの説明プロセスで重視すべき倫理的観点について整理された資料
インフォームド・アセント | 時事用語事典(Imidas)
インフォームドコンセントは、患者が十分な情報を得て理解したうえで、医療行為への同意を行うプロセスであり、医師と患者の権利・義務に関わる法的・倫理的な枠組みとして確立しています。
参考)インフォームドコンセント(いんふぉーむどこんせんと)とは? …
これに対してインフォームドアセントは、法的拘束力をもつ同意ではなく、法規制を受けない小児被験者からの自発的な同意として説明されることが多く、治験用語集などでも「法規制上の義務がないが、自発的に行う行為」と明記されています。
つまり、両者の大きな違いは「誰が法的な同意主体か」「どこまでが法的義務でどこからが倫理的努力義務か」という点にあります。
法的には、未成年者や判断能力が不十分とみなされる人の医療行為については、原則として保護者・法定代理人がインフォームドコンセントの主体となります。
参考)インフォームド・コンセント - Wikipedia
一方で、国連子どもの権利条約などにより、子どもにも年齢や成熟度に応じた情報提供と意見表明の機会を保障することが求められており、その具体的な医療現場での実践としてインフォームドアセントが重視されるようになりました。
このような経緯から、近年の臨床研究倫理指針や治験関連ガイドラインでは、「保護者からのインフォームドコンセントに加えて、小児からのインフォームドアセントを得ること」が推奨または事実上必須とされるケースが増えています。
もう一つの重要な違いは、説明内容の深さと形式です。
インフォームドコンセントでは、文書による説明と署名が求められ、治療法の選択肢、リスク・ベネフィット、代替療法、撤回の権利など多岐にわたる事項を網羅的に説明することが求められます。
これに対しインフォームドアセントでは、説明内容を子どもの理解度に合わせて要点を絞り込み、視覚的・体験的な説明を重視し、署名の有無や様式も柔軟に運用されることが多いとされています。
結果として、アセントの文書は成人向け同意文書と比較して簡潔でありながら、子どもの不安をやわらげ、安心して質問できるような言葉選びが重視される点が特徴です。
インフォームドコンセントの法的・倫理的背景と患者の権利について詳しく知りたい場合に有用
インフォームドコンセントと倫理 | 公益社団法人 日本看護協会
インフォームドアセントをめぐる意外な論点の一つに、「あえて子どもの反対を尊重するべき場面」がある、という議論があります。
例えば、リスク・ベネフィットのバランスが拮抗しており、医学的にも絶対に実施すべきとは言い切れない検査や研究的治療の場合、保護者が同意していても、患児本人が強く拒否するなら、医療チームは再検討を行うべきだとする立場です。
このようなケースでは、法的には保護者のインフォームドコンセントが優先されうる一方で、倫理的には子どものアセント(あるいはディセント:不同意)をどこまで尊重するかが重要なテーマとなります。
もう一つの論点として、小児期から適切なインフォームドアセントの経験を積むことが、その後の青年期・成人期の自己決定能力の向上につながる可能性が指摘されています。
小児期に医療スタッフと対話し、自分の気持ちや希望を伝え、それが治療方針に反映された経験は、「自分は意見を言ってよい存在だ」という感覚の形成に寄与します。
このことは、慢性疾患患者が成人医療へ移行するトランジション期において、治療継続やセルフマネジメントの主体性を高めるうえで重要な基盤となり得ます。
さらに、インフォームドアセントの考え方は、医療以外の領域への応用も議論されています。
例えば、学校での健康調査やワクチン接種、ライフログを用いた研究、オンラインサービスでのデータ利用など、子どもや若年者が自らの情報の扱いについて意見を述べる場面は増えつつあります。
参考)https://www.sccc.jp/media/20230920-092609-119.pdf
こうした状況では、「形式的な保護者同意」だけでなく、当事者である子ども・若年者の理解と賛成をどう得るかというインフォームドアセント的な視点が、個人情報保護やデジタル倫理の文脈でも重要になっていく可能性があります。
医療従事者にとって、インフォームドアセントは「小児治験のための追加手続き」としてだけでなく、子どもの権利擁護と長期的な自己決定支援のための実践的ツールでもあります。
日々の診療場面で、短い説明と簡単な質問からでも、子どもの声を拾い上げる工夫を積み重ねることが、結果的に医療の質と患者満足度の向上につながります。
今後、小児医療や医療データ活用が高度化するなかで、インフォームドアセントの意味を改めて問い直し、現場ごとの具体的な運用指針を議論していくことが重要になるでしょう。
インフォームドアセントの背景にある「インフォームド」の意味や医療情報の説明の奥行きに触れたい場合に参考になる資料
インフォームドは「(医療情報の)説明を受けたうえで」
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