
AST(Antimicrobial Stewardship Team)は、抗菌薬の不適切な使用や長期投与がもたらす薬剤耐性(AMR)の拡大に対して、院内で抗菌薬使用を管理・支援する実働チームとして位置づけられています。
参考)AST(抗菌薬適正使用支援チーム)
医療機関におけるast 活動の中心的な目的は、抗菌薬を「必要な患者に、必要な薬剤を、適切な量と期間で」使用することで、治療効果と安全性を両立させながら耐性菌の出現を抑制することにあります。
参考)抗菌薬適正使用支援チーム(AST)について - 島田市立総…
AMR対策アクションプランでは、ASTは抗菌薬管理プログラムの要として明確に位置づけられており、ASTの活動指標(抗菌薬使用量、アンチバイオグラム、血液培養提出率など)が国のモニタリングにもつながる重要な役割を担っています。
参考)薬剤師ならではの強みと視点を要に、チームで抗菌薬適正使用を支…
ASTがICT(感染制御チーム)と並列あるいは密接に連携して構成されている事例も多く、感染対策と抗菌薬適正使用を一体的に進めることで、院内感染と耐性菌の双方にアプローチする枠組みが構築されています。
参考)第11回:抗菌薬適正使用支援チーム(AST)の取り組みについ…
日本政府が公開しているAMR対策サイトでは、ASTの意義と薬剤師の役割について分かりやすく整理されているため、院内啓発資料を作成する際の基礎資料として活用できます。
薬剤師ならではの強みと視点を要に、チームで抗菌薬適正使用を支援(AMR対策サイト)
ASTのメンバー構成は医師、薬剤師、臨床検査技師、看護師などの多職種で構成されることが一般的で、規模の大きい施設では20名超のメンバーが参加している例も報告されています。
医師は感染症診療の専門性を生かして治療方針を俯瞰し、薬剤師は抗菌薬の選択・用法・用量・TDMを含む薬物療法の細部のチェック、検査技師は微生物検査やアンチバイオグラム作成、看護師は適切な検体採取や投与管理・患者教育などを担う形で役割分担がなされています。
特に薬剤師は、病棟薬剤師として各病棟に常駐し、担当医からのコンサルテーション対応とASTミーティングでの情報共有を通じて、ast 活動の「ハブ」となる役割を果たしているケースが多く見られます。
臨床検査技師は、血液培養陽性や耐性菌検出などの結果をAST側へ迅速にフィードバックし、検査の適正利用や微生物学的データに基づくデエスカレーション提案を通じて、抗菌薬の合理的選択に重要な貢献をしています。
三重県のICネット資料では、AST活動の概要と看護師の立場から見た役割がスライド形式で整理されており、院内研修用の資料を作る際に構成の参考になります。
当院におけるAST活動について 看護師の立場から(三重ICNET資料)
多くの施設で実施されているast 活動のコアは、ASTラウンド(回診)とASTミーティング、そして日常的なコンサルテーション対応です。
ASTラウンドは週1回程度の頻度で、血液培養陽性患者、耐性菌検出患者、広域抗菌薬長期投与患者などを対象に、医師・薬剤師・検査技師・看護師がベッドサイドで抗菌薬の妥当性や検査計画を多職種で検討する場として機能します。
ASTミーティングでは、病棟薬剤師が各病棟で受けたコンサルテーション内容を報告し、症例ごとに抗菌薬選択、投与期間、デエスカレーションのタイミング、培養検査の再評価などをディスカッションします。
さらに、ラウンドでの介入内容やアウトカムを振り返ることで、介入の妥当性や改善点が共有され、次のast 活動に活かされる「PDCAサイクル」が自然と回る仕組みを構築している施設も多く見られます。 抗菌薬適正使用支援チーム(AST)|年報|社会医療法人財団 …
三島地域の事例では、ASTラウンドの対象患者や評価項目(TDM実施率、血液培養実施率など)が具体的に示されており、自施設のラウンド対象基準を見直す際のベンチマークになります。
抗菌薬適正使用支援チーム(AST)について(島田市民病院)
ast 活動の成果を客観的に示すうえで重要になるのが、プロセス指標とアウトカム指標の設定です。代表的なプロセス指標として、広域抗菌薬使用量、血液培養提出率、複数セット提出率、TDM実施率などが用いられています。
アウトカム指標としては、耐性菌発生率、感染症発生率、特定耐性菌(MRSAやESBL産生菌など)の検出件数、抗菌薬関連有害事象の発生状況などが評価され、これらを定期的にモニタリングすることでAST介入の効果を検証しています。
参考)https://www.mie-icnet.org/wp-content/uploads/2024/09/20241217_mieicnet_amr2.pdf
アンチバイオグラムは院内の分離菌に対する各抗菌薬の感受性を集計したものであり、ast 活動では治療ガイドラインやレジメン見直しの基礎データとして活用されます。
日本の施設例では、ASTがアンチバイオグラムを作成・更新し、その結果を医師向け勉強会や院内ニュースで共有することで、経験的治療や初期抗菌薬選択の場面で「耐性菌を意識した処方」が自然に行われるようにしていることが報告されています。
ASTとICTを紹介するページでは、AMR対策とAST活動の関係、評価指標の考え方がコンパクトに整理されていて、委員会資料作成時の引用元として便利です。
ICTとAST(自治医科大学附属病院薬剤部ページ)
検索上位の事例を眺めると、ast 活動の中でもあまり注目されていないものの、現場の空気を変えるうえで重要な取り組みとして「ASTニュース」「院外向けニュース」「eラーニング」が挙げられます。
ある施設では、2023年度に院内ASTニュースを15回、院外向けニュースを12回発行しており、抗菌薬の供給不安、新しい耐性菌情報、アンチバイオグラムの更新内容などをタイムリーに共有することで、医師・看護師・薬剤師に「ASTがいつも現場を見ている」という安心感と緊張感を同時に醸成しています。
別の施設では、抗インフルエンザ薬の選択指針や周術期抗菌薬の使い方をテーマに、eラーニング形式の職員教育を行っており、忙しい医師でも短時間でASTが推奨するスタンダードを学べる環境整備が進んでいます。
こうした「情報発信型」のast 活動は、介入件数やラウンド回数のように数値化しにくいものの、院内全体の抗菌薬に対する意識を底上げするうえで重要であり、結果的に処方監査やコンサルテーションの受け入れやすさにも影響していると考えられます。
ASTの取り組みを紹介するサラヤのコラムは、ニュースや勉強会を通した啓発活動の工夫が具体例とともに記載されており、自施設で「ASTニュース」を立ち上げる際のヒントになります。
抗菌薬適正使用支援チーム(AST)の取り組みについて(サラヤ医療コラム)
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