耐糖能異常とHbA1cの保険診療における査定の仕組みを理解することは、医療機関の経営安定に直結する重要な課題です。
近年、支払基金や国保連合会による審査が厳格化され、特に「糖尿病疑い」「耐糖能異常疑い」といった傷病名でのHbA1c検査算定に注意が必要となっています。
参考)https://www.ibaho.jp/documents/newspaper/hns_mame_11.pdf

耐糖能異常とは、正常な糖代謝と糖尿病の中间状態に位置し、別名「境界型糖尿病」や「糖尿病予備群」とも呼ばれます。
診断基準は以下の通りです。
| 検査項目 | 正常 | 耐糖能異常 | 糖尿病 |
|---|---|---|---|
| 空腹時血糖値(mg/dL) | < 100 | 100~125 | ≧ 126 |
| 75g OGTT 2時間値(mg/dL) | < 140 | 140~199 | ≧ 200 |
| HbA1c(%) | < 5.7 | 5.7~6.4 | ≧ 6.5 |
参考)Table: 糖尿病および耐糖能障害の診断基準-MSDマニュ…
医療保険の適応は、この「糖尿病型」に該当する場合が基本となります。耐糖能異常のみでの治療は、保険診療では原則として認められないことに注意が必要です。
HbA1c検査が査定される主な理由は以下の通りです。
参考)https://ksk.ac.jp/wp-content/uploads/875d9814583b4dc90a192ca8a3bb9aee.pdf
支払基金の統一事例では、「糖尿病疑い、耐糖能異常疑いに対するHbA1cの算定間隔は、原則として3か月に1回」と明確に示されています。
HbA1cは過去1か月から3か月の平均血糖値を反映する指標であるため、短期間での繰り返し測定は医学的意義が薄いと判断されます。
ただし例外として、以下のケースでは月1回の算定が認められます。
査定を防ぐための具体的な対策を紹介します。
1. 病名表示の適正化
カルテ上の傷病名は常に正確に表示しましょう。「糖尿病疑い」ではなく検査結果に応じて「糖尿病」「境界型糖尿病」など適正な病名に変更することが重要です。
参考)レセプトで耐糖能精密検査の算定が査定になる理由 &#8211…
特にHbA1cは「糖尿病」の確定病名でも「糖尿病の疑い」でも認められますが、耐糖能精密検査やインスリン測定は糖尿病確定患者でなければ原則として認められません。
参考)https://www.ssk.or.jp/shinryohoshu/saikaisyou_torikumi/kashikarepo/kashikarepo_jirei.files/ip254.pdf
2. 検査間隔の適正管理
HbA1cの算定間隔は原則3か月に1回です。
電子カルテシステムでアラート設定を行うなど、組織的な管理体制を構築しましょう。
3. 医学的必要性の明記
「なぜこの検査が必要なのか」をカルテに明確に記載することが査定の予防に効果的です。
参考)~査定・返戻の対策をしよう!検査の算定編~ - ひのでクリニ…
例えば。
など、具体的な理由を医師と共有して記録しましょう。
4. 検査後のフォローアップ記録
検査結果に基づいた診療の流れや治療方針の記録も重要です。
検査で終わらせず、結果をどう活用したかまで記録することで、医学的必要性の説得力が増します。
あまり知られていない重要なポイントをご紹介します。
🔍 健診結果からのフォローアップ
健康診断で「要再検査」「要精密検査」と指摘された患者が来院した場合、適切な病名表示が重要です。
「糖尿病疑い」ではなく、健診結果に応じて「糖尿病予備群」「境界型糖尿病」など正確な状態を表す病名を使用することが求められます。
参考)hba1c/">https://www.takanohara-dm.com/blood-glucose-level_hba1c/
🔍 75g経口糖負荷試験(OGTT)の併用
空腹時血糖やHbA1cのみで判断せず、75gOGTTを実施することでより正確な診断が可能です。
日本人間ドック学会の2026年度改定では、FPG110~125mg/dLまたはHbA1c6.0~6.4%の場合はOGTTを推奨しています。
OGTT結果を含めることで、診断の確実性が高まり、保険適応の根拠も明確になります。
🔍 肥満症治療薬との関連
2025年以降、ゼップバウンドやウゴービなどの肥満症治療薬が保険適応となりましたが、これらの適応には「肥満症+耐糖能異常」などの条件があります。
参考)血糖グレーゾーンでも肥満症治療薬の対象に?ゼップバウンドの適…
この場合、耐糖能異常は適応の根拠となり、適切な検査と記録が求められます。
🔍 副腎疾患との関連
原発性アルドステロン症(PA)や副腎性SCS(subclinical Cushing's syndrome)も耐糖能異常を合併することが知られています。
参考)https://yamaguchi-endocrine.org/pdf/yanase_201812.pdf
これらの疾患を疑う場合、耐糖能精密検査とともにHbA1c測定が適応となるケースがあります。
以下のリンクは、査定対策や診断基準の理解に役立つ公式情報源です。
日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」第1章 糖尿病診断の指針
最新の診断基準と検査の適応について詳細に記載されています。
参考)https://www.jds.or.jp/uploads/files/publications/gl2024/01.pdf
支払基金統一事例「HbA1cの算定間隔(糖尿病疑い)」
HbA1c検査の算定間隔に関する公式な取扱いが明記されています。
日本人間ドック学会「血糖に関する判定区分の改定(2026年4月施行)」
2026年4月からの新しい血糖判定区分とOGTTの推奨基準が記載されています。
算定チームによる「査定・返戻の対策をしよう!検査の算定編」
実務的な観点からの検査算定の注意点と対策が詳しく解説されています。
厚生労働省 特定健診・保健指導の実施状況について
特定健診における血糖・HbA1cの判定区分と保健指導対象者の選定基準が確認できます。
参考)https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/09_4.pdf
これらの情報を定期的に確認し、診療報酬請求の適正化に努めましょう。
支払基金「一般254 糖尿病疑い等に対するインスリン(IRI)の取扱い」
糖尿病疑い・耐糖能異常疑いに対するインスリン測定の適否について詳しく解説されています。
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