
qSOFA(quick Sequential Organ Failure Assessment)は、2016年にSepsis-3の定義変更 alongside 提唱された敗血症スクリーニングツールです。感染症を疑う患者において、以下の3項目を評価し、2項目以上を満たす場合に敗血症の可能性が高いと判断されます。
参考)https://www.okayama.med.or.jp/activity/kaiho_lineup/files/mamechishiki/1512_mamechishiki.pdf
qSOFAの3項目(各1点)
このスコアの最大の特徴は、血液検査を必要とせず、バイタルサインのみでベッドサイドで迅速に評価できる点にあります。 救急外来や一般病棟など、ICU以外の環境で特に有用とされています。
診断フローの実際
感染症が疑われる患者に対して、まずqSOFAを評価します。2点以上の場合、敗血症を強く疑い、SOFAスコアによる臓器障害の評価へ進みます。SOFAスコアでベースラインから2点以上の増加があれば、敗血症と診断されます。
参考)12.敗血症について – 日本産婦人科医会
このフローにより、専門医以外でも迅速に敗血症リスクを認知し、早期治療開始につなげることが可能になります。
qSOFAの感度と特異度は、臨床現場での解釈に重要な意味を持ちます。複数の研究を統合したメタ分析(38研究、n=385,333)によると、死亡予測に対するqSOFAの感度は60.8%、特異度は72.0%でした。
参考)https://www.medicalonline.jp/review/detail?id=1683
感度と特異度の臨床的意味
これは、qSOFAが「陰性でも敗血症を否定できない」ことを意味します。 一方、陽性の場合には高い確率で敗血症を疑う根拠となります。
参考)【文献】発熱性好中球減少(FN)患者ではqSOFAよりもMA…
ICU内とICU外での違い
興味深いことに、感度と特異度は評価環境によって逆転します。
この結果は、qSOFAがICU外でのスクリーニングに設計されていることを反映しています。本邦の救急外来でも、同様の傾向が確認されており、qSOFAはSIRS基準より予後予測に優れつつ、SOFAスコアと同等の予後予測能を示すことが報告されています。
参考)https://confit.atlas.jp/guide/event/jsicm2019/subject/O91-4/detail?lang=ja
qSOFAはSIRS(Systemic Inflammatory Response Syndrome)基準を代替するものではなく、補完するツールとして位置づけられています。
qSOFAとSIRSの比較
| 項目 | qSOFA | SIRS |
|---|---|---|
| 感度(死亡予測) | 60.8% | 88.1% |
| 特異度(死亡予測) | 72.0% | 25.8% |
| 評価項目 | 3項目(バイタルのみ) | 4項目(白血球数含む) |
| 評価時間 | 1分以内 | 5分程度 |
| 血液検査 | 不要 | 必要(白血球数) |
SIRSは感度が高い(88.1%)ため、敗血症患者を見逃しにくい反面、特異度が低い(25.8%)ため、多くの患者がSIRS基準を満たしてしまいます。 一方、qSOFAは特異度が高く、陽性の場合の信頼性が高いという特徴があります。
臨床での使い分け
日本版敗血症診療ガイドライン2024でも、両者を状況に応じて使い分けることが推奨されています。
参考)https://www.jsicm.org/pdf/cq/J-SSCG2024/J-SSCG2024_Main.pdf
qSOFA+低体温の性能
感度が14.3%も改善することが示されました。低体温は、敗血症患者において予後不良の強力な予測因子であり、特に高齢者や免疫不全患者で頻繁に観察されます。
参考)https://www.wakayama-med.ac.jp/med/eccm/assets/images/library/bed_side/46.pdf
なぜ低体温が重要なのか
敗血症の全身性炎症反応では、発熱だけでなく、重篤な病例では体温調節機能の破綻により低体温を呈することがあります。 低体温は、以下のような機序で敗血症重症度と関連します。
このため、qSOFA評価時に体温をルーチンで測定し、37℃以下の場合には「追加の1項目」として考慮することが、感度向上につながる可能性があります。ただし、これは公式のqSOFA基準に含まれていないため、臨床判断の補助として活用すべきでしょう。
参考:低体温の追加評価は、敗血症関連死亡の予測においてmoderateな感度・特異度を持つものの、スクリーニング目的には依然として不十分である可能性が指摘されています。
qSOFAを臨床現場で効果的に活用するには、以下のポイントに注意が必要です。
実践的ポイント
早期治療の重要性
敗血症が疑われる場合、診断1時間以内に以下の「バンドル(要点)」を実施することが推奨されています。
qSOFAは、この早期治療開始のトリガーとして活用されることが最も重要です。
日本版敗血症診療ガイドライン2024(日本集中治療医学会)
最新のqSOFA推奨と敗血症診療の全体像が掲載されています。
和歌山県立医科大学 集中治療部 敗血症の診断と治療(2024年4月)
qSOFAスコアの詳細と臨床フローが図解されています。