手足口病は、口の中や手のひら、足の裏などに2〜3mmの水疱を伴う発疹が现れるウイルス性感染症です。 感染から発症までの潜伏期間は2〜5日間で、発熱は38度以下の場合が多く、ほとんどの患者は3〜7日で回復します。
ただし、まれに髄膜炎や脳炎といった中枢神経系の合併症、心筋炎、神経原性肺水腫、急性弛緩性麻痺など重篤な合併症を伴うことがあります。 医療従事者は、これらの重篤な合併症の兆候を見逃さないよう注意深い経過観察が必要です。
参考)手足口病|国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト
近年特筆すべきは、かつて「夏風邪の一種」とされていた手足口病が、秋冬にも流行している点です。 温暖化によるウイルス活動期間の延長、コロナ禍での感染減少による「免疫の空白世代」の増加、低温でも感染力を保つA6型ウイルスの主流化などが背景にあります。

手足口病の潜伏期間は2〜5日間ですが、この期間中も感染リスクがあることを医療従事者は認識しておく必要があります。 発症前からすでにウイルスを排出している可能性があり、症状が出ていない段階で兄弟間や保育園での集団感染が起こり得ます。
潜伏期間中のポイントとして、感染源が特定しにくく「いつうつったのか分からない」ケースが珍しくない点が挙げられます。 このため、家族内に患者が出た場合や流行期には、症状の有無にかかわらず手洗い・うがい・タオルの共用禁止などの基本対策を徹底することが重要です。
臨床現場では、潜伏期間中の患者が他の疾患で受診した際に、待合室などで二次感染を引き起こすケースが報告されています。 小児科や保育施設を管轄する医療機関では、受付段階での感染疑いのスクリーニングや、待合室の換気・消毒の徹底が求められます。
手足口病の感染力が特に強い理由は、3つの異なる感染経路を持つことにあります。
参考)https://mymc.jp/clinicblog/151898/
| 感染経路 | 感染メカニズム | 予防のポイント |
|---|---|---|
| 飛沫感染 | くしゃみ・咳の飛沫を吸い込む | マスク着用、咳エチケット、換気 |
| 接触感染 | 水疱の液体、唾液、鼻水に触れる | 手洗い、タオル・食器の個別管理 |
| 糞口感染 | 便中のウイルスが口に入る | おむつ交換後の手洗い、トイレ消毒 |
飛沫感染では、感染者のくしゃみや咳で空気中に飛び散ったウイルスを含む飛沫を吸い込んだり、目や鼻などの粘膜に付着することで感染が広がります。 飛沫は1〜2m程度飛ぶとされており、特に発熱期や発疹が出始めた時期は感染力が強まります。
接触感染は、ウイルスが付着した手すりや吊り革、おもちゃ、携帯電話などに触れ、その手で目や口などの粘膜を触ることで感染します。 水疱の内容物に触れることでも感染する可能性があり、完全に防ぐことが難しい感染経路です。
参考)https://pharm.hospital.okayama-u.ac.jp/kanja/pdf/mado292.pdf
糞口感染は、感染者の排泄物に含まれていたウイルスが他者の口に入ることで感染します。 トイレの後、手洗いが不十分なまま食べ物を扱うことや、おむつ交換などが感染経路になり得ます。 手足口病は治った後も2〜4週間、便の中にウイルスが排泄され続けるため、この経路での感染に特に注意が必要です。
手足口病の感染力が最も強いのは、発症初期から発疹が出始めてからの3〜5日間です。 ただし、便中にはウイルスが2〜4週間、場合によっては数週間残るため、家庭内感染には長期的な注意が必要です。
2025年版の登園・登校再開の目安は以下の通りです。
発疹が残っていても、体調が安定していれば登園可能な場合もあります。 ただし、医療従事者としては、保護者に対して「完治=ウイルス完全消失」ではないことを十分に説明する必要があります。
特に保育施設や幼稚園など、乳幼児が集団生活をしている環境では注意が必要です。 手足口病は、治った後も比較的長い期間便の中にウイルスが排泄され、また感染しても発病しないままウイルスを排泄している場合もあると考えられるため、日頃からの手洗いが最も効果的な予防策となります。
手足口病は主に小児の疾患ですが、大人も感染します。 免疫がない場合、大人も発症し、特に妊婦や高齢者は注意が必要です。 大人の手足口病では、皮膚症状が強く現れることがあり、疼痛が強い場合や、爪の脱落(爪甲剥離症)が後遺症として現れることがあります。
参考)手足口病|原因・症状・大人への感染リスクと皮膚科での適切な治…
大人が感染する主なケースは以下の通りです。
臨床現場では、小児科医や保育士が患者のケアを通じて感染し、手足の発疹や口内炎に苦しむケースが報告されています。 医療従事者は、患者対応時の手袋着用、手洗いの徹底、personal protective equipment(PPE)の適切な使用が求められます。
参考)大人の手足口病の特徴について【症状・治療・発疹の写真も掲載】…
また、妊婦が妊娠末期に感染した場合、新生児に重篤な感染を引き起こす可能性が指摘されています。 妊婦の患者や妊婦の医療従事者には、特に注意深い感染対策が必要です。
ここで、一般的な情報サイトではあまり触れられない、医療従事者向けの意外な感染対策の盲点を紹介します。
盲点1:電子体温計・血圧計の共有
小児科や保育施設では、複数の患者で電子体温計や血圧計を共用することがあります。 接触感染のリスクを考慮すると、これらの医療機器は患者ごとに消毒するか、使い捨てのカバーを使用することが望ましいです。 アルコール消毒が効きにくい場合があるため、機器の取扱説明書に従った適切な消毒方法を選択してください。
盲点2:待合室のおもちゃ・絵本
小児科の待合室に置かれたおもちゃや絵本は、複数の患者が触れるため、接触感染の温床になり得ます。 流行期には、これらの物品を一時的に撤去するか、頻回の消毒が推奨されます。
盲点3:医療従事者のスマホ・タブレット
電子カルテや情報検索に使用するスマホやタブレットは、患者対応の合間に頻繁に触れます。 これらのデバイスもウイルスで汚染される可能性があり、定期的な消毒が必要です。 防水ケースの使用や、消毒用アルコールでの定期的な拭き上げを習慣化しましょう。
盲点4:加湿器の管理
乾燥した環境ではウイルスが長く生存します。 加湿器を使って湿度50〜60%を保つことは有効ですが、加湿器本体が汚染されると、逆にウイルスを拡散させるリスクがあります。 加湿器の定期的な清掃・消毒を徹底してください。
厚生労働省:手足口病に関するQ&A(2025年版)
ヒロクリニック:秋冬も流行 手足口病の潜伏期間と感染経路
国立健康危機管理研究機構:手足口病
国立成育医療研究センター:手足口病
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