受診者と患者の違いを医療現場でどう使い分けるか

受診者と患者の違いを意識することは医療安全や信頼関係にどう影響するのでしょうか?

受診者と患者の違いを整理して医療現場での使い分けを考える

受診者と患者の違いの概要
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呼称の背景にある医療観

「患者」は病気やけがなど健康障害のある人、「受診者」は健診や予防接種なども含め医療サービスを受ける人全般を指す呼称として用いられています。

参考)患者・患児
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権利意識と関係性の違い

「患者」は治療関係を前提とした言葉である一方、「受診者」はサービス利用者やパートナーとしての側面を強調する呼び方として議論されてきました。

参考)病気でもないのに「患者さま」って呼ばれるのに違和感ないですか…
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実務での使い分けのポイント

予防医療・健診・面接など診断・治療前の段階では「受診者」、明らかな疾患があり治療や看護が行われている場面では「患者」とする施設方針も見られます。


受診者と患者の違いを定義から確認する



受診者と患者の違いを考える際には、まずそれぞれの「定義」と、医療系の学会や行政がどのように用語を整理しているかを押さえることが重要です。


参考)https://www.nurse.or.jp/nursing/home/publication/pdf/guideline/yougokaisetu.pdf
「患者」は、日本看護科学学会の用語解説では「病気や外傷など、何らかの健康障害のために医療機関を受診し、診断・治療や看護などを受ける者」と定義されており、健康障害があることと医療を受けていることが要件として示されています。


一方「受診者」は、法令上厳密な定義が存在しないものの、健診や予防接種、カウンセリングなども含めて「医療機関や医療サービスを利用する人」を広く指す実務的な用語として、行政資料や各種ガイドラインで用いられています。



臨床現場では、健康診断目的で来院した人や、予防接種を受けに来た人に「患者」というラベルを付けることが適切かどうかがしばしば議論されてきました。


参考)「患者様」と「患者さん」、正しい表記はどっち?|MISHIM…
予防医療・健康増進を重視する医療機関では、「病気を抱えていない人も含めた来院者を一律に患者と呼ぶのは医療観として望ましくない」とし、「受診者」を統一呼称として採用している例も報告されています。



このように「患者」は病気・障害を前提とする用語であり、「受診者」は医療サービスの受け手全般を指す包括的な用語として使われている点が、両者の基本的な違いと言えます。


参考)患者 - Wikipedia
医療従事者が日常的に使い分ける際には、「対象者の現在の健康状態」「目的(診断・治療か予防・健康管理か)」「組織としての方針」という三つの観点から呼称を選ぶと、現場での混乱を減らしつつ、本人の尊厳と医療安全の両立が図りやすくなります。



受診者と患者の違いが医療安全とコミュニケーションに与える影響

受診者と患者の呼び分けは、単なる言葉の違いではなく、医療安全とコミュニケーションの質に少なからず影響を与えることが報告されています。


健診や予防接種の受診者を「患者さま」と呼ぶ慣習は、病気でない人にも「治療を受ける側」の意識を与え、医療者側との関係を一方的な受け身の構図に固定しやすい側面があります。



医療安全の観点では、患者というラベルが付くことで「治療が必要な人」という認識が強まり、疾患の有無にかかわらず一律に診察室内での指示に従う存在とみなしてしまうリスクもあります。


たとえば、健診受診者に対して本来説明すべき検査の選択肢やリスクを十分に共有せず、患者と同様の一括した説明で済ませてしまうと、本人のインフォームド・コンセントが形式的なものにとどまりかねません。



コミュニケーション上の微妙な違いとして、「患者さん」「患者様」「受診者」の三つが相手の権利意識や期待値に与える影響も議論されてきました。


厚生労働省の通達以降、「患者様」という表現が過度なお客様意識を助長し、クレームリスクや過剰なサービス要求につながる可能性があるとして、「患者さん」や「受診者」への移行をすすめる動きが報告されています。


こうした議論を踏まえると、医療安全と良好なコミュニケーションを両立するためには、対象者の状況に応じて「受診者」「患者さん」など複数の呼称を柔軟に使い分けることが望ましいと考えられます。



受診者と患者の違いと予防医療・健診領域での使い分け

予防医療や健診領域では、受診者と患者の違いが特に重要な意味を持ちます。


人間ドックや職場健診、がん検診などに来院する人の多くは、現時点では自覚症状も診断された疾患も持たない「健康な人」であり、従来の「病気を抱える人」としての患者像とは大きく異なっています。


このような文脈で「患者」という呼称を用いると、「病気かもしれない」「治療が必要になるかもしれない」という不安を過度に煽り、受診者の心理的負担を高めてしまう可能性があります。


参考)http://hikumano.umin.ac.jp/PsyTx.pdf


ゼロマチクリニック天神では、予防医療を重視する方針のもと、来院者を統一的に「受診者」と呼ぶ運用を行っており、病気が明らかな場合には文脈に応じて「患者さん」と呼ぶこともあると説明しています。


また、健診結果の説明や生活習慣改善の支援では、「患者教育」ではなく「受診者への健康教育」として、自ら選択・行動するパートナーとしての立場を強調することが推奨されています。



健診領域では、検査で「要精査」や「要治療」の結果が出た時点で、対象者は初めて「患者」としての側面を持ち始めます。


しかし実務上は、健診の場面と治療の場面が異なる施設・時間軸で展開されることが多く、同一人物を健診では「受診者」、外来では「患者」と呼び分けることで、場面ごとの役割や責任範囲を明確化する効果も期待できます。



受診者と患者の違いと医療者–サービス提供者としての視点(独自の考察)

「患者」は語源的に、苦痛や受難を抱える存在としてのニュアンスが強く、医療者はそれを軽減・除去する専門家という役割に立つことになります。



心身医療や心理療法の領域では、患者というラベルが「病人として振る舞うべきだ」という暗黙の役割期待を生み、治療同盟の形成や自己効力感の涵養に支障をきたすことがあると指摘されています。


そのため一部のプログラムでは、意図的に「クライアント」「利用者」「参加者」といった呼称を用いることで、受診者が能動的・協働的な姿勢を取りやすくする試みが報告されています。


こうした視点を一般外来に応用すると、慢性疾患の自己管理やリハビリテーションでは「患者」と呼び続けるよりも、「プログラム参加者」「セルフマネジメントの実践者」といった役割を言語化する工夫が、長期的な行動変容を支える可能性があります。



一方で、急性期医療や救急の場面では、患者という呼称がチーム医療の中で役割を明確化し、診断・治療・看護のプロセスを安全に進めるためのラベリングとして機能している面も見逃せません。


このように、受診者と患者の使い分けは「どちらが正しいか」を巡る二項対立ではなく、「医療者–サービス提供者としての自らの立ち位置を文脈に応じてどう調整するか」という問いかけとして捉えることが、今後の医療コミュニケーション設計にとって重要だと考えられます。



受診者と患者の違いと呼称選択に関する実務上のポイントとチェックリスト

最後に、受診者と患者の違いを踏まえて、医療機関や職場で呼称を選択する際の実務的なポイントを整理します。


第一に、組織としての方針が文書化されているかどうかです。看護部門や事務部門がそれぞれ異なる呼称を用いていると、対象者への説明だけでなく、医療安全上の連絡・記録に齟齬が生じる可能性があります。


このため、患者・受診者・利用者といった呼び方をどの場面で用いるかを、職員向けマニュアルや院内用語集として明文化しておくことが推奨されています。



第二に、対象者の文脈を尊重することです。健診や面談の場面で「患者様」と呼ばれることに違和感を覚える人がいる一方で、長く通院している人の中には「患者として認められている」と感じることで安心するケースもあります。


実務レベルでは、受付・案内では「受診者の皆さま」「ご利用者の皆さま」といった包括的な呼称を用い、診断・治療が始まる場面では「患者さん」という表現に切り替えるなど、状況に応じたハイブリッドな運用も考えられます。


第三に、呼称選択が患者の権利と医療者の責務にどう影響するかを定期的に振り返ることです。過度な「様」付けが不適切な権利意識を助長する一方、過度な「患者」というラベリングが自己決定権を損なうリスクもあるため、院内研修や事例検討を通じてバランスを調整していくことが重要です。



呼称に関するチェックリストの例として、以下のような項目を設けることが考えられます。


  • 健診・予防接種・健康相談などの案内文書で、対象者をどの呼称で統一しているか
  • 外来診療・入院治療の場面で、医師・看護師・事務が同じ呼称を使えているか
  • 患者・受診者の権利に関する説明資料で、呼称と内容が整合しているか
  • 苦情・相談窓口で用いる呼称が、過度な「お客様意識」や過度な「病人意識」を助長していないか
  • 心理療法・リハビリ・教育プログラムなどで、役割に応じた呼称を検討しているか


このようなチェックを通じて、受診者と患者の違いを単なる用語の問題としてではなく、医療の質と信頼関係を左右する重要な要素として継続的に検討していくことが、今後の医療現場で求められていると言えるでしょう。



受診者・患者といった用語の整理や看護用語の詳細な解説として参考になる資料
日本看護協会「看護にかかわる主要な用語の解説」


患者・患児の定義と看護学術用語としての位置づけを確認したいときに参照できるページ
公益社団法人日本看護科学学会「患者・患児」用語解説


医療機関における「患者さま」「患者さん」「受診者」などの呼び方の議論を知るための参考記事
ゼロマチクリニック天神「病気でもないのに『患者さま』って呼ばれるのに違和感ないですか?」


医療現場での「患者様」表記に関する動向や厚生労働省通達との関連を把握する際の参考
MISHIMA Kota「『患者様』と『患者さん』、正しい表記はどっち?」


医療における「患者」と「クライアント」の違いやサービス提供者としての視点を考える論考

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