
大腸癌は日本において男女ともに罹患率が高いがんの一つで、2021年には肺がんに次いで2番目に多いがんと報告されています。 大腸癌の特徴として、初期段階では自覚症状がほとんど現れないことが挙げられます。このため、症状を感じた時点で既に進行がんになっているケースが少なくありません。
大腸癌のステージは、がんが大腸の壁にどの程度深く浸潤しているか(深達度)、リンパ節への転移の有無、そして肝臓や肺などの遠隔臓器への転移の有無という3つの要素を総合して判断されます。 これにより、ステージ0、I、II、III、IVの5段階に分類されます。
早期発見の重要性は、生存率のデータからも明確に示されています。ステージIの5年生存率は92.3%と非常に高い数値である一方、ステージIVになると18.3%まで大きく低下します。 このことから、大腸癌は早期に発見・治療することが予後を大きく改善することがわかります。
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定期検診としての大腸内視鏡検査は、早期発見に最も効果的な方法です。40歳以降は定期的な検査を受けることが推奨されています。 特に、血便や便の形状変化、継続的な排便習慣の変化がある場合は、早めに医療機関を受診することが重要です。
参考)https://mymc.jp/clinicblog/377357/
大腸癌のステージ分類は、TNM分類という国際的な基準に基づいて行われます。Tは原発腫瘍の深達度(TisからT4)、Nは所属リンパ節転移の程度(N0からN2)、Mは遠隔転移の有無(M0またはM1)を表します。
参考)Table: 大腸癌の病期分類*-MSDマニュアル プロフェ…
ステージ0(Tis N0 M0)
がんが粘膜内にとどまっている状態です。この段階では内視鏡治療で根治切除が可能で、5年生存率は94.0%と最も良好な予後が期待できます。 粘膜内にとどまっているため、リンパ節転移や遠隔転移のリスクはほぼありません。
参考)「大腸がんの生存率」はご存知ですか?ステージ別の症状も医師が…
ステージI(T1-2 N0 M0)
がんが粘膜下層から固有筋層まで浸潤している状態です。固有筋層とは大腸の壁の筋肉の層を指します。 この段階でもリンパ節転移はありません。ステージIの5年生存率は92.3%、10年生存率は80.4%と比較的良好です。 がんの深達度が浅い場合は内視鏡的治療、深い場合は手術療法が選択されます。
参考)大腸がんの進行度とステージ分類|大腸がんサポートnavi|武…
ステージII(T3-4 N0 M0)
がんが固有筋層を超えて漿膜下層、または隣接臓器まで浸潤している状態です。 リンパ節転移はありませんが、がんが大腸の壁を越えて周囲に広がっています。ステージIIの5年生存率は85.5%、10年生存率は69.8%です。 この段階では内視鏡的治療は適応とならず、手術療法が唯一の根治 Treatmentとなります。
参考)5.大腸癌の診断 -進行度はどうやって決定される?‐|大腸癌…
ステージIII(Any T N1-2 M0)
深達度に関係なく、リンパ節転移がある状態です。 リンパ節転移の個数により、さらにIIIa、IIIb、IIIcに細分類されます。ステージIIIの5年生存率は75.5%、10年生存率は61.2%と、ステージIIよりやや低下します。 リンパ節転移があるため、再発リスクが上昇し、術後の補助化学療法が考慮されることが一般的です。
ステージIV(Any T Any N M1)
肝臓、肺、腹膜、骨などの遠隔臓器に転移がある状態です。 転移が1か所の場合はIVa、複数の場合はIVb、腹膜播種がある場合はIVcに分類されます。 ステージIVの5年生存率は18.3%、10年生存率は11.1%と大幅に低下します。 治療は手術、抗がん剤治療、放射線治療などを組み合わせた集学的治療が行われます。
参考)https://ubie.app/byoki_qa/clinical-questions/byhi5vd9950v
大腸癌の症状はステージによって大きく異なります。初期ステージでは自覚症状がほとんどない一方、進行するにつれて特徴的な症状が現れてきます。
ステージ0・Iの症状
この段階では、前述の通り自覚症状はほぼありません。 出血があったとしても微量で、肉眼では確認できないことがほとんどです。 一部の症例で、便の形状の変化(細くなる、硬くなるなど)、血便や粘液便、排便習慣の変化(便秘や下痢など)が現れることがありますが、これらの症状は他の疾患でもみられるため、大腸癌特有の症状ではありません。
参考)大腸がんのステージ別症状と進行度の確認方法は?早期発見のポイ…
ステージIIの症状
がんが大腸の壁の筋肉の層を超えて深く進行すると、物理的な通過障害が起き始めます。 代表的な症状は以下の通りです:
参考)https://tnf-clinic.com/blog/2025/12/22/symptoms-of-colon-cancer-explained-by-stage/
ステージIIIの症状
リンパ節転移が生じると、ステージIIの症状に加えて、より強い腹痛や腹部の張り、食欲不振などが現れることがあります。がんが腸管を圧迫することで、便通の異常がより顕著になります。
ステージIVの症状
遠隔転移が生じると、大腸の症状だけでなく全身に影響が及びます。 具体的な症状は転移先によって異なります:
参考)大腸がんを放置した場合の症状とは? 転移や腹膜播種、最新の治…
また、腸管からの持続的な出血による重度の貧血、転移した臓器の機能低下による全身のだるさ、体重減少などが現れます。 腸が完全に詰まる腸閉塞を起こすと、激しい腹痛や嘔吐で救急搬送されることもあります。
国立がん研究センター 大腸がん 全ページ - 治療や症状について詳しく記載されています
大腸癌の症状の中で、特に注意すべきなのが便の形状変化と残便感です。これらの症状は、がんが腸管内腔を物理的に狭めていることを示唆しており、進行がんの重要なサインとなります。
便柱細小(便が細い)のメカニズム
大腸の中に腫瘍ができると、便が通るスペースが狭くなり、細い便が出ることがあります。 以前よりも明らかに便が細い状態が続く場合は、腸の中に変化が起きていないか検査で確認することが必要です。
参考)便秘が続くのは大腸がんのサイン?注意したい便の変化と受診の目…
便が細くなる原因は主に2つあります。
1. 腸の一部が狭くなることで、そこを通過する便も細くなるケース。大腸がんや大腸ポリープなどが発生すると、腸管が狭窄し、便の通り道が制限されます。
2. 腹筋や腸周りの筋力が低下している場合。特に更年期の女性は、エストロゲンの分泌低下により自律神経が乱れ、腸の機能が低下することで便秘になりやすい傾向があります。
特に直腸がんは腸の末端部分にできるがんで、便が通過する直前の部分が狭くなるため、特に便が細くなりやすい特徴があります。 直腸がんでは、頻繁な便意、残便感、血便などが現れることがあります。
残便感のメカニズム
残便感は、排便後に「まだ便が残っている」「すっきりしない」と感じることが特徴で、特に直腸がんでは顕著に見られる症状です。 大腸がんが直腸やその近くにある場合、便が出てもすっきりしない感覚が続くことがあります。
参考)大腸がんの残便感とは? その他要因による残便感や大腸がんの最…
受診の目安
以下の症状が併せて出現する場合は要注意です:
腸閉塞(イレウス)の危険性
大腸がん末期の急変のなかでも、腸閉塞は発症頻度が高く、対応を誤ると命に関わる危険な症状です。 腸の通り道が腫瘍でふさがれることで発生します。
参考)大腸がん末期の急変とは?腸閉塞・出血など起こりうる症状と在宅…
腸閉塞の症状は以下の通りです。
参考)大腸がん(ステージⅣ)の「腹膜播種の特徴と治療の選択肢」
完全に腸が閉塞した場合は、緊急手術が必要になることもあります。 腹膜播種がある場合、がんが腸管を物理的に閉塞したり、癒着を引き起こしたりすることで腸閉塞を起こすリスクが高まります。
大腸癌のステージIVにおいて、特に予後が不良とされるのが腹膜播種です。腹膜播種とは、がん細胞が腹膜(腹腔を覆う薄い膜)に広がり、腹腔内で複数の小さな腫瘍結節を形成する進行性の病態です。
腹膜播種のメカニズム
大腸がんが進行すると、がん細胞が腸の壁を突き破り、腹腔内に広がることがあります。 初期の段階では、がん細胞がお腹の中にばら撒かれても、目に見えない程度の大きさです。 時間が経つにつれて徐々に大きくなっていき、ゴマくらいの大きさから、ゴルフボールくらいの大きさのしこりへと成長します。
参考)https://medicalnote.jp/diseases/%E5%A4%A7%E8%85%B8%E3%81%8C%E3%82%93/contents/200629-001-CR
腹膜播種は、がん細胞が腹腔内に散在するため、外科的手術による完全切除が難しいことが特徴です。 この状態は腹水の貯留や臓器機能の障害を引き起こすことが多く、治療が困難なケースが少なくありません。
腹膜播種の症状
腹膜播種になると以下の症状をきたすことがあります:
参考)https://medicalnote.jp/diseases/%E5%A4%A7%E8%85%B8%E3%81%8C%E3%82%93/contents/180806-007-RI
腹膜播種の余命と治療
一般的に腹膜播種の予後は悪化しやすいと考えられています。 大腸がんの腹膜播種があると、抗がん剤治療もしくは緩和医療へ移行することが一般的です。
しかし、近年では新たな治療法も開発されています。
大腸がん(ステージⅣ)の腹膜播種の特徴と治療の選択肢 - 治療法の詳細について解説されています
標準治療が難しい場合でも、治療により改善する可能性はあります。希望を捨てることなく、治療に取り組むことが重要です。 治療法の選択は患者の状態に応じて決定されるため、専門医と相談しながら最適な方法を検討することが重要です。
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