
ヒトの動脈血pHは通常7.35〜7.45の非常に狭い範囲に保たれており、この範囲を外れると酵素反応や電解質バランスが急速に破綻し始めます。
pHが7.35未満に低下した状態をアシドーシス、7.45を超えて上昇した状態をアルカローシスと呼びますが、これは「酸塩基平衡がどちら側に傾こうとしているか」を示す概念であり、単に瞬間のpH値だけを指すわけではありません。
実際には、アシドーシスでも代償によって血液pHが一見正常に見える「隠れ酸塩基異常」があり、pHだけで安心してしまうと病態を見逃す危険があります。
参考)アシドーシスとアルカローシス - ナースハッピーライフ
重症になると、pHが7.0以下では昏睡、7.7以上では痙攣が出現しうるとされており、数値と臨床症状をセットで把握することが重要です。
アシドーシス・アルカローシスの症状は、中枢神経系、循環器系、呼吸器系、電解質異常の4つの観点で整理しておくと、ベッドサイドでの評価がスムーズになります。
アルカローシスとアシドーシスの定義・pH基準について分かりやすく整理した看護師向け解説です。
アシドーシス・アルカローシスとは|症状、原因、pHの評価(ナース専科)
アルカローシスとアシドーシスはどちらも酸塩基平衡の異常ですが、症状の「質」はかなり異なります。
アシドーシスでは、倦怠感、頭痛、悪心・嘔吐、集中力低下、傾眠〜昏睡など、意識レベルの変化と全身倦怠感が目立つ傾向があります。
一方アルカローシスでは、手指口周囲のしびれ、テタニー、筋けいれん、不安感、動悸など、神経・筋肉の興奮性亢進に関連する症状が前景に出やすくなります。
共通点として、不整脈や心筋虚血の誘発、電解質異常(特にカリウム)の変動を通じて循環動態へ悪影響を及ぼし得る点は、両者で共有される重要なリスクです。
参考)アシドーシス・アルカローシスの症状と原因、カリウムとの関係性…
また、慢性呼吸不全や腎不全の患者では、アシドーシスとアルカローシスが同時に存在する「混合性障害」も珍しくなく、症状が非典型的になりやすいため、ABGと病歴の統合的な判断が求められます。
参考)アシドーシスとは? 種類ごとの病態・治療、アルカローシスとの…
症状の違いや原因、カリウムとの関係をまとめて確認したいときに有用な解説です。
アシドーシス・アルカローシスの症状と原因、カリウムとの関係性
アルカローシスは、呼吸性アルカローシスと代謝性アルカローシスに分かれ、それぞれ症状の背景が異なります。
呼吸性アルカローシスは、過換気によるPaCO2低下が原因で、急性発症しやすく、めまい、口周囲や指先のしびれ、動悸、不安感、胸部圧迫感などがよく見られます。
典型例の過換気症候群では強い呼吸困難「感」を訴えますが、実際には血中酸素飽和度は保たれていることが多く、過度な酸素投与や紙袋再呼吸などの誤った対応は現在は推奨されていません。
代謝性アルカローシスでは、嘔吐や胃液吸引、利尿薬の長期使用などによるH+喪失やHCO3-増加が原因となり、筋力低下、テタニー、不整脈、意識混濁などが緩徐に進行することがあります。
アルカローシス時には血中イオン化カルシウムが減少し、テタニーやしびれが出現しやすくなることは意外と知られておらず、「アルカローシスなのに低カルシウム血症様の症状」という点は臨床での重要な観察ポイントです。
呼吸性・代謝性アルカローシスの機序や検査の読み方を補足する情報源です。
アシドーシスとアルカローシス(管理薬剤師.com)
アシドーシスも同様に、呼吸性アシドーシスと代謝性アシドーシスに分かれ、それぞれ症状の出方が違います。
呼吸性アシドーシスは、CO2排泄障害によりPaCO2が上昇することで生じ、急性では頭痛、傾眠、錯乱、意識障害など中枢神経症状が目立ちますが、慢性では眠気や易疲労感のみといった軽い症状にとどまることもあります。
慢性呼吸不全患者では、腎によるHCO3-貯留などでpHが部分的に代償されるため、ABGでpHがほぼ正常でもPaCO2上昇やHCO3-上昇があれば「慢性呼吸性アシドーシス」と考え、急激な酸素投与によるCO2ナルコーシスのリスクを意識する必要があります。
代謝性アシドーシスでは、乳酸アシドーシス、ケトアシドーシス、腎不全などで酸が蓄積し、倦怠感、悪心・嘔吐、呼吸促迫、クスマウル呼吸、血圧低下などが認められ、進行するとショックや多臓器不全に至り得ます。
意外なポイントとして、代謝性アシドーシスでは代償として呼吸性アルカローシス(深く速い呼吸)が同時に起こるため、「SpO2は保たれているのに異常に深く速い呼吸」として現場で最初に気づかれることが少なくありません。
参考)アシドーシスとアルカローシス|理学療法士・作業療法士国家試験…
理学療法士向けにガス交換とアシドーシス・アルカローシスを結びつけて解説している記事です。
アシドーシスとアルカローシス|理学療法士・作業療法士向け解説
アルカローシスとアシドーシスの症状評価では、pHやPaCO2、HCO3-などの数値だけでなく、「患者の訴え方の変化」に着目することが重要です。
たとえば代謝性アシドーシスが進行し、クスマウル呼吸となる患者は「息が苦しい」というよりも「息をしても疲れる」「呼吸が止まらない」と表現することがあり、看護師やリハ職がこの微妙な言葉の違いを拾うことで早期介入につながる可能性があります。
逆に呼吸性アルカローシスでは、SpO2が保たれているにもかかわらず強い不安と胸部不快感を訴えることがあり、心疾患との鑑別に迷う場面も少なくありませんが、「発症状況(ストレス・パニック)、手足のしびれ、テタニー徴候」を系統的に問診することで見極めのヒントになります。
また、アシドーシス・アルカローシスは電解質異常、特にカリウム(K+)と密接に関係しており、アシドーシスでは細胞外K+上昇、アルカローシスでは低K+となりやすいため、不整脈や筋力低下、便秘などの症状も合わせてモニタリングする必要があります。
こうした「患者の言葉」「身体所見」「モニタリング項目」を、シンプルな観察チェックリストとしてチームで共有しておくことは、ガイドラインではあまり強調されないものの、現場では酸塩基異常の早期発見に非常に役立つ独自の工夫と言えるでしょう。
看護・コメディカルの視点で、アシドーシスとアルカローシスの病態・ケアを体系的に学べるコンテンツです。
アシドーシスとアルカローシス(ナースハッピーライフ)
【第3類医薬品】ハイチオールCプラス2 360錠