
市販後調査におけるアプレピタントの副作用発現率は23.3%(n=150)と報告されています。 もともと抗悪性腫瘍剤による化学療法を受けている患者さんが対象であるため、副作用と基礎疾患の症状を区別することが重要です。
最も頻度が高いのは「しゃっくり」で10.0%と報告されています。 次いで肝酵素の上昇(AST上昇4.0%、ALT上昇2.7%)が多くみられます。便秘と下痢はそれぞれ2.0%程度で、消化器症状としては比較的軽度です。
その他の頻度の高い副作用として以下のものが挙げられます。
これらの症状は5%未満の頻度ですが、患者さんのQOLに大きく影響する可能性があります。特に眠気やめまいは、化学療法中の転倒リスクを高めるため注意が必要です。
参考)アプレピタントカプセル125mg「NK」 - 基本情報(用法…
参考:アプレピタントカプセル125mg「NK」の副作用一覧(medley.life)
アプレピタントの添付文書には、頻度不明ながら重大な副作用が3つ記載されています。これらは早期発見・早期対応が極めて重要です。
1. 皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)
発熱、紅斑、そう痒感、眼充血、口内炎等の症状があらわれた場合には、直ちに投与を中止し、適切な処置を行う必要があります。初期症状を見逃さないよう、患者さんへの説明を十分に行いましょう。
参考)アプレピタントカプセル80mg「NK」の効能・副作用|ケアネ…
2. 穿孔性十二指腸潰瘍
激しい腹痛、嘔吐、下血などの症状があらわれる可能性があります。化学療法中の患者さんは免疫力が低下しているため、穿孔のリスクが高まる可能性があります。腹痛を訴えた場合は早期に画像診断や内視鏡検査を検討します。
3. ショック、アナフィラキシー
全身発疹、潮紅、血管浮腫、呼吸困難、意識消失、血圧低下等の症状があらわれた場合には、直ちに投与を中止し、適切な処置を行う必要があります。 アナフィラキシーは初回投与時だけでなく、2回目以降でも発現する可能性があるため、継続的な観察が必要です。
アプレピタントは肝薬物代謝酵素CYP3A4により代謝される薬剤であり、肝機能や血液検査に様々な影響を及ぼす可能性があります。
参考)https://medical.itp.ne.jp/kusuri/shohou-20120000004476/
肝機能検査値
AST、ALTの上昇が5~15%未満の頻度でみられます。また、アルカリホスファターゼ上昇、γ-GTP上昇、ビリルビン上昇も報告されています。 化学療法中の患者さんは、抗がん剤自体による肝障害も起こりやすいため、アプレピタントの投与前後で肝機能をモニタリングすることが推奨されます。
腎機能検査値
蛋白尿、BUN上昇が5~15%未満、尿糖、クレアチニン上昇が5%未満の頻度で報告されています。 Chemotherapy-induced nephrotoxicityとの鑑別が重要ですが、アプレピタント単独での腎機能悪化は比較的稀です。
血液検査
貧血、好中球数減少、白血球数減少、血小板数減少、リンパ球数減少、単球数減少などが5%未満の頻度で報告されています。 抗がん剤による骨髄抑制との区別は困難ですが、アプレピタント投与開始後に血液検査値が急激に変化した場合は注意が必要です。
電解質・代謝系
高血糖、アルブミン減少、低カリウム血症、低ナトリウム血症、低クロール血症も報告されています。 特に低ナトリウム血症は、化学療法中の患者さんで問題となることがあるため、経過観察が必要です。
アプレピタントはCYP3A4により代謝されるため、CYP3A4を阻害または誘導する薬剤との相互作用に注意が必要です。
併用禁忌
ピモジド(オーラップ錠)との併用は禁忌です。ピモジドの血中濃度を上昇させ、QT延長や心室性不整脈などの重篤な副作用を引き起こす可能性があります。
併用注意
以下の薬剤との併用には注意が必要です。
参考)https://www.pmda.go.jp/drugs/2009/P200900041/18018800_22100AMX02251_I100_1.pdf
CYP2C9基質薬との相互作用
ワルファリン、トルブタミドなどCYP2C9により代謝される薬剤の効果が減弱する可能性があります。INRのモニタリングを強化する必要があります。
最新報告では、タミバロテンとの併用時にQT延長がみられた例があり、心電図モニタリングが推奨されています。
参考:アプレピタント 相互作用情報(KEGG Medicus)
アプレピタントの副作用に関する意外な知見として、以下の点が挙げられます。
しゃっくりの対策
しゃっくりは10%と最も頻度の高い副作用ですが、バクロフェン5mg内服で改善したとの報告があります。 化学療法中の患者さんにとって、しゃっくりはQOLを大きく低下させる症状です。アプレピタント投与後に持続するしゃっくりを訴えた場合は、バクロフェンの併用を検討する価値があります。
肝酵素上昇の機序
AST/ALT上昇はCYP3A4競合阻害が一因とされています。 スタチン系薬剤(特にピトバスタチン)など、CYP3A4を介さない代謝経路を持つ薬剤への切り替えを検討することで、肝酵素上昇を回避できる可能性があります。
体重変化への影響
体重増加と体重減少の両方が報告されています。 化学療法中の食欲不振や悪心・嘔吐が改善することで体重が増加するケースと、アプレピタント自体の副作用で体重が減少するケースが混在している可能性があります。栄養状態のモニタリングが重要です。
光線過敏症
光線過敏症は頻度不明ですが報告されています。 化学療法中の患者さんは免疫力が低下しており、皮膚バリア機能も脆弱化しています。アプレピタント投与中は、日焼け対策や紫外線曝露への注意を患者さんに説明することが望ましいでしょう。
術後悪心・嘔吐(PONV)への適用
アプレピタントはもともと抗悪性腫瘍剤による悪心・嘔吐(CINV)を適応としていますが、術後悪心・嘔吐(PONV)への適用も検討されています。 外科手術後の患者さんでは、アプレピタントの副作用プロファイルが異なる可能性があります。今後、PONVへの適用拡大に伴い、新たな副作用プロファイルが明らかになるかもしれません。
参考:アプレピタント(Wikipedia)
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