
アンドロゲンとは、炭素数19個のステロイドホルモン(C19ステロイド)の総称であり、男性の性徴発現や維持に重要な役割を果たすホルモン群を指します。このカテゴリーには、テストステロン、ジヒドロテストステロン(DHT)、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、アンドロステンジオンなど、複数の物質が含まれます。
参考)1) アンドロゲン(テストステロン) (臨床検査 52巻11…
テストステロンは、アンドロゲンの中で最も代表的な物質であり、男性のアンドロゲンの95%以上を占めます。精巣のライディッヒ細胞で産生され、下垂体から分泌される黄体形成ホルモン(LH)の刺激によって分泌が調節されています。残りの5%は主に副腎において、アンドロステンジオンなどの他のステロイドから生成されます。
参考)精巣ホルモン|内分泌
DHEAは副腎由来のアンドロゲンで、テストステロンの約5%という弱い生理活性しか持ちません。しかし、DHEA-sulfate(DHEA-S)として血液中に高濃度で存在し、他のアンドロゲンの前駆体として重要な役割を果たしています。
テストステロンは、胎生期には外性器と内性器の分化、思春期には二次性徴の発現、成人においては性機能の維持などにおいて重要な働きをしています。具体的には、筋骨格系の発達、生殖器の成熟、体毛の増加、声の変化、筋肉量の増加、骨密度の維持、赤血球産生の刺激、抗動脈硬化作用など、多岐にわたる生理作用を有しています。
テストステロンの多くは、前立腺や肝臓などの末梢の標的器官に取り込まれると、5α-リダクターゼ(5α-reductase)の作用により、ジヒドロテストステロン(DHT)に変換されます。DHTはテストステロンよりもアンドロゲン受容体への結合親和性が高く、より強いアンドロゲン活性を示します。
参考)アンドロゲン受容体
この変換プロセスは、特に前立腺や毛乳頭細胞で重要であり、DHTは男性型脱毛症(AGA)や前立腺肥大症の発症に関与しています。5α-リダクターゼには1型と2型があり、2型がより強力なDHTを生成すると言われています。
参考)アンドロゲンとテストステロンの違い - 知識の卵&#x1f9…
テストステロンおよびDHTは、標的細胞の細胞質に局在するアンドロゲン受容体(androgen receptor;AR)に結合すると、ARの構造変化を引き起こします。ホルモンが結合したARは細胞質から核へと移行し、標的遺伝子上のアンドロゲン応答配列に結合して、その遺伝子の転写を制御することで生物学的作用を発現します。
参考)http://www.mens-health.jp/wp-content/themes/sequence/pdf/News_Letter_Vol7.pdf
アンドロゲン受容体は、非活性状態では主に細胞質内に存在し、アンドロゲンが結合すると立体構造が変化して活性化されます。構造的には、ホルモンが結合する領域、DNAへ結合する領域、転写調節に関与する領域から成り、これらが協調して作用を発揮します。
DHTはテストステロンよりも受容体への結合親和性が高く、より強いアンドロゲン活性を示すと整理されます。このため、DHTに変換される組織(前立腺、毛乳頭、皮脂腺など)では、より強力なアンドロゲン作用が発現します。
成人男性の基準値は年齢によって異なりますが、50歳以上では1.93~7.40 ng/ml程度が正常範囲とされています。女性でも副腎や卵巣から少量のアンドロゲンが分泌されており、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)や多毛症などの診断において、アンドロゲン値の測定が重要になります。
アンドロゲンの過剰や不足は、様々な疾患と関連しています。男性では、LOH症候群(加齢男性性腺機能低下症)により、筋力の低下、骨密度の減少、性欲の減退、エネルギーの低下などが起こることがあります。
参考)https://www.urol.or.jp/lib/files/other/guideline/44_loh.pdf
女性では、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)により、高アンドロゲン血症、月経不順、多毛症、ニキビ、男性型脱毛などの症状が現れます。PCOSは月経のある年代の女性の約10%にみられる頻度の高い病気で、不妊症の主要な原因となります。
参考)多嚢胞性卵巣症候群 概要 - 小児慢性特定疾病情報センター
意外な事実として、アンドロゲンは抗肥満作用を有することが、最近のAR欠損マウスの解析から明らかになっています。アンドロゲン-アンドロゲン受容体(AR)系の活性化は、エネルギー代謝の中枢性調節機構において、レプチンシグナルを増強し、抗肥満作用を有することが示されています。
また、アンドロゲンは判断力や記憶力にも関係している可能性が指摘されており、認知機能の維持にも重要な役割を果たしていると考えられています。さらに、抗動脈硬化作用も有しており、男性の心血管疾患リスクの性差にも関与している可能性があります。
参考)男性の&#x30A…
臨床的には、アンドロゲン過剰症の原因が卵巣か副腎に由来するかを知ることは、女性における無排卵や特発性多毛症・副腎や卵巣の男性化腫瘍など男性化症状の原因部位の鑑別に重要です。アンドロステンジオンの測定は、この鑑別診断に有用ですが、2019年12月5日ご依頼分をもって受託中止となっています。
参考)アンドロステンジオン(2019年12月5日ご依頼分をもって受…
日本泌尿器科学会のLOH症候群診療の手引き。診断基準と治療アルゴリズムが詳述されています。
日本小児内分泌学会の性分化疾患の診断と治療に関するWebテキスト。アンドロゲン関連疾患の診断フローが参考になります。
エビオス錠 300錠 【指定医薬部外品】 胃腸・栄養補給薬